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『……写真は撮らないのか』
『これ、動画だよ』
『…そうか』
先程の動画を再生する、多分これで三度目だ。隣からは不機嫌そうなオーラが漂ってきた。
「なぁに、ふふ、見て見てこの顔。かわいい〜」
「……藤野の方が可愛いだろう」
「そ、ういうことを、言ってんじゃないのさ…」
ジマトシの天然にはほとほと困る。お前ぇ、これでどれだけの女を落としてきたんだ!天然タラシめ!!「……藤野も食べてくれ」そう言って私にカメラを向けるジマトシ。ピコン、と音が鳴った。
「…どうしても?」
「ああ」
「ジマトシのお願いなら聞かないわけにはいかないかぁ」
カメラをチラッと見て、グミを口の中に入れる。くそう、酸っぱい。それが良いのだけれども。酸っぱさに目を瞑って口をすぼめる。「ふ、」とジマトシの息が漏れた音が聞こえた。勢いよく顔を上げれば、こちらを見て頬を緩めている彼がいた。
「なに笑ってんのさぁ」
「すまない」
「思ってないでしょ」
「ああ」
潔いなこの野郎。もう一つグミを手に取り、ジマトシの口に押し付ける。そちらに気を取られたのをいいことにジマトシの手からスマホを奪い、ジマトシを映す。
「ふふ、食べてくださーい」
ぐいぐいと口元にグミを更に押し付ければ、ぱかりと開いた口。…口でか。歯医者さんに喜ばれそうだな、なんて思っていれば、私の指ごと咥えたジマトシ。
「はぁ?!何してんの?!」
眉をひそめて酸っぱさに耐えているくせに、口元はしてやったりと弧を描いていた。こいつ、確信犯かよ。ジマトシ天然じゃなかった、思ったより腹黒かった。
「…俺の勝ちか?」
「ジマトシって意外と負けず嫌いだよね、今日は負けてあげようじゃないか」
「そうかもな」
あ、動画忘れてた。途中で離しはしなかったものの動画の存在は忘れていたので、恐らくブレブレの映像が撮れているだろう。とりあえず最後にジマトシを映してから動画を終えた。
「あー、もうジマトシにはこのグミあげない」
「そうか、それは残念だな」
「ハイハイ思ってないやつ」
最近のジマトシは本当に心臓に悪い。ドクドクとうるさく脈打つ心臓を抑えながら机に突っ伏した。いや、まさかね、ほんと、勘弁してくれ。
「…ジマトシの馬鹿」
「そうか」
「ハゲちゃえ」
「そうか」
「返し方雑かよ」
「すまない」
「いいよ」
私、ジマトシのこと好きかもしれない。ぎゅ、と目を瞑ればジマトシが微笑む姿が浮かんだ。
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あまね(プロフ) - やめてください供給過多です嘘ですごめんなさいもっとして (8月2日 1時) (レス) @page13 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
薊 - いっぱいしゅきです (2020年6月16日 17時) (レス) id: c593b9094d (このIDを非表示/違反報告)
レイア - ジマトシさいこーです!!らぶです!!更新楽しみにしています!! (2020年6月4日 0時) (レス) id: 9d193411e2 (このIDを非表示/違反報告)
ogofumi(プロフ) - あ、ジマトシ好きです。一目惚れです。ハートを撃ち抜かれました。 (2020年5月27日 0時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - タイトル見た瞬間吹き出すました(笑)凄い発想ですね、好きです((え (2020年5月26日 22時) (レス) id: 4ffda966c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あだしの。 | 作成日時:2020年5月25日 20時