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「あれ、俺が教えた作戦失敗した感じ?」
「あんな奴ご飯に誘った俺が馬鹿だった」
「こっぴどく断られたと見た」
至さんが真澄に話しかけているのを見て、何となく事情を察した。凡そ、監督の家族だから取り入っとけとかそんなことを言ったんだろう。Aはあんまり人と関わるの好きじゃなさそう、というか、俺たちに良い印象抱いて無さそうだから難しいと思うけど。
「Aもこれから一緒に暮らすネ?」
「みたいっスね」
「オーウ、私、Aと仲良くなれるように頑張るヨー」
「オレもAちゃんと仲良くなれるように頑張ります!」
シトロンさんも咲也もAと仲良くなろうと息巻いている。仲良くなれるならなった方が生活しやすいし、監督の家族だし、そりゃ良いけど……。まぁ、根気強く行けば仲良くなれるか。
「サクヤとマスミはAと同じ学校だからズルいネー……」
「同じ立場同士頑張りましょ、シトロンさん」
とは言っても、俺は脚本書いたから打ち合わせとかでチラッと話す機会あるんだけどな。
「よし! じゃあまた通しやろっか。これ終わって反省会したら今日はお終い!」
監督の呼び掛けに皆で返事をして最初の位置へと戻る。何度も通してるってのもあって、皆バミリが無くても直ぐに動けてるな。だなんて、少し自分達の成長を噛み締めていた。
無事に本日最後の通し稽古も終わり、皆で寮に戻っているうちに気付く。至さんがいない。
「至さんどこ行った……?」
「イタルなら先帰っててって言ってたヨー」
「へぇ、あの人が居残りだなんて珍しい事もあるもんだな」
特に気にも留めずに足を進めていれば、真澄に手を引っ張られていた監督が此方を振り返く。
「A、もしかしていない?!」
「あんな奴いなくていい」
「マスミは百姓ネ!」
「もしかして、薄情……ですかね?」
「至さんが残ってるらしいんで、多分大丈夫だと思いますよ」
そう告げれば、少し安心したように息を吐く監督。とりあえず夕飯作り終えても戻って来なかったらAを呼びに行く、ということで話は纏まった。ちなみに、今日の夕飯は安定のカレーだ。Aが来るからって張り切って昨日から仕込んでいたし、まぁ今日くらいは許そう。
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作者名:あだしの。 | 作成日時:2020年11月3日 22時