28 ページ28
「ふふ、Aが正式に劇団の仲間入りしてくれたし、次は夏組だね！」
夏組のオーディションは午後から予定されているので、それに向けて皆も準備を始める。朝ご飯の食器を洗っていれば、碓氷が現れた。
「立花。アイツは渡さない」
「は？ 渡さないもクソもアンタのじゃないんですけど」
「お前のでもない」
「家族なんで私達は」
「俺も将来の旦那なんだから家族」
「碓氷だけは許さない」
「諦め悪い……」
「こっちのセリフなんだけど」
そして食器を洗い終わった後に、これも、と先程使っていたコップを差し出してきた碓氷。嫌がらせの仕方が陰湿すぎる。腹いせに濡れた手で碓氷に水を掛けた。当然顔を狙って。
「ウザイ……！」
「こっちの台詞だっつーの！ 何なのお前！」
「ちょっとちょっとちょっと！？ お前らなにやってんの？！」
皆木さんがやって来て私達の間に入る。次第に他の春組の人達もお姉ちゃんも集まってきて、なんだなんだと私達を見る。
「お姉ちゃんは！ 嫁に出さない！」
「頑固すぎ、うざい……！」
「お前らホントいい加減に……って監督！ ちょっと助けてくださいよ！」
「え〜……っと、何してるの？」
お姉ちゃんが私に話しかけてきたので、碓氷がお姉ちゃんを狙っているから気を付けろと何度も告げる。碓氷の方から凄まじい視線を感じるけれど、気にするまでもない。
「お姉ちゃん暫くは劇団のことで手一杯だからそんな余裕ないよ」
その言葉に安堵する私と落胆する碓氷。ようやく落ち着いた、と息をつく皆木さん。
「Aって監督さんのことになるとだいぶキャラ変するよね。探せばA似の攻略キャラいそう」
「オー！ イタルはギャルゲーも嗜んでるネ？」
「もち、オタクですから」
「真澄くんとAちゃんは仲が良いんだね！」
わぁわぁと収拾がつかなくなった所で、松川さんが「そろそろオーディションの時間じゃないですか？」と声を掛けてきた。お姉ちゃんが時計を確認して、そろそろ行こうかと春組の人達に声を掛ける。
「行ってらっしゃい。碓氷には気を付けて」
「う、うん。じゃあ行ってくるね！」
「これでやっと二人きり……好き……」
「離れろ碓氷今すぐに！」
私の叫びも虚しく、お姉ちゃんにベッタリくっついて劇場へ移動していく碓氷。皆を送り出してからは、松川さんと雑務をこなして夏組のオーディション結果を待つことになった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あだしの。
| 作成日時：2020年11月3日 22時
