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修正後の17話を見てからお読み下さい
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「Aちゃん、勉強中にごめんね」
夕飯を食べ終えてバルコニーで勉強をしていれば、お風呂上がりの佐久間先輩から声を掛けられる。何だろう、と顔を上げれば台本を持つ先輩がいて、何だか嫌な予感がした。
「あ、大丈夫だよ、今回は読み合わせじゃないから。ただ、前に屋上でくれたアドバイスについて色々と俺オレなりに試行錯誤してたんだけど……今の演技がオレ的には一番良いと思ってるんだ。Aちゃんはどう思う? って、本番前日の夜に聞く事でもないんだけどね」
「屋上で……あ、ピンスポの。あの時はすみません本当に。何か柄にもなく熱くなってて、今思うと恥ずかしいです」
「そんなことないよ! 少なくともオレは嬉しかったし、監督に話したら嬉しそうにしてたよ。他の皆からもそこの演技良くなったって褒めてもらったし、雄三さんにも!」
お姉ちゃんに話したのか。だからお姉ちゃん、専属の照明にならないかって誘ってきたのかな。なんて考えていると、佐久間先輩が再び演技に対しての感想を求めてきた。答えなんて決まっている。
「……凄く良いと思います。ピンスポも喜んでます」
「そっか、ピンスポにも喜んで貰えたなら良かった。舞台に関してはAちゃんの方が先輩だもんね、もし他にも気になることあったら次からも遠慮なく言ってね!」
「いえ、照明を三年間やっただけなので、舞台に立った経験は無いですし。それに、次からも、って言われても……私は今回で降りるつもりですから」
「あ、そっか……今回だけの約束なんだっけ……」
しんみりとした空気が流れ出したのを察して、慌てて佐久間先輩を寮内に戻す。
「風邪ひいちゃいますから、早く部屋で温まってください。本番明日ですよ!」
「え、うん、Aちゃんもね、お風呂空いてるから!」
佐久間先輩が室内に戻ったのを確認してから溜息を吐いた。最近、溜息がよく出る。理由は分かりきっているし、多分、溜息を止める方法は一つしかないことも分かっている。
「MANKAIカンパニーの専属照明……」
今までの私なら即決出来たはずなのに。やらない、って一刀両断出来たのに。
「やらないと後悔するんだろうなぁ」
辞めたくないという気持ちが大きくなりすぎてしまった。照明が楽しいものだと再認識してしまった。この舞台を照らしたいと思ってしまった。此処の演者を魅せる手助けがしたいと、思ってしまった。
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作者名:あだしの。 | 作成日時:2020年11月3日 22時