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「…Aさ、最期にね、辛そうな顔で"もういいんだ"って言ったんだ」



酔いが回ってきているからか、
今日はやけに口まで回る



「……これ、どういう意味だと思う?」



自分の奥さんのことを、友人に聞くだなんて

俺は君をちゃんと理解していないのかな



「俺は、Aが生きるのを諦めたとは思わねぇよ」



岩ちゃんが、赤い顔をこちらに向けてそう言い切った

ああ、安心する



「あの、」



国見ちゃんが小さくもよく通る声で、俺に呼びかけた



「A、同期でしたけど……。アイツ、前に言ってたんですよ」



この場の全員が国見ちゃんの言葉を待った



「自分が死んでも及川さんには前向いて生きてほしい、私に囚われずに他の女性を愛して欲しい。って」



だから、"もういいんだ"、か

私は十分愛を受け取ったから、そう控えめに笑う様子は容易く想像できる



「ちなみにどうしてそんな話に?」

「前に、映画であったじゃないですか。奥さんを亡くした旦那さんの話」



最後に、君と一緒に見た映画

そうだ、その時も君はそんな事を言っていたね



「死ぬ間際に愛してるって言ったら、及川さんを縛り続けることになるから絶対言わない。そう言ってました」



そんなことまで、考えてたのか

けどね、



__君は、俺のことを甘く見過ぎだよ

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作者名:あだしの。 | 作成日時:2019年5月5日 19時

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