第五十五訓「女の一番の化粧は笑顔」 ページ5
九兵衛は知っていた。
お妙に重い枷をつけ、お妙の思いをしりつつも見て見ぬフリをし、男でも女でもない存在にした輿矩と敏木斎をどこかで恨んでいた。
皆、九兵衛を想い、最後まで護り通した。
結局、昔と変わらないまま自分は弱い。
砂利を握りしめ、声が段々震えていく。
「……なんで、こんなふうになっちゃったんだろ…いつからこんなふうに………僕も…ホントはみんなと一緒にままごとやあやとりしたかった。みんなみたいに、キレイな着物で町を歩きたかった。妙ちゃんみたいに…強くて、優しい女の子になりたかった」
我慢していた涙が溢れ出した。
「…九ちゃん、九ちゃんは…九ちゃんよ。男も女も関係ない、私の大切な親友。だから…泣かないで」
九兵衛の頬に涙が落ちる。
そしてそっと九兵衛の頭を撫でた。
「それでほォ…お侍はん」
「妙ちゃん……めんなさい、ごめんなさい」
「でも…今日位泣いたっていいよね、女の子だもの」
この一件が終わった別の日、私達はもう一つの件を忘れていた。
まぁ、私はどうでもいいんだけど。
スナックすまいるには包帯をグルグル巻きのミイラ男…っつーか土方が来ていた。
お妙がお詫びにと皆を呼んだが用事があるため行けないとのこと。
未だに責任を感じているお妙にミイラ男は煙草を吹かしながら言った。
今お妙に出来ることは何か考えてみろ、と。
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作者名:憐 | 作成日時:2014年3月12日 2時