第七十二訓「消せないデータもある」 ページ22
全て終わり、消えた残骸を見ながらたまが力なくモップを落とした。
[…よかったんでしょうか、これで。芙蓉様に、博士に笑顔をと…した事なのに。なのに、私の中の芙蓉様は、笑ってくれません。泣きやんでくれません…不安定で、思考回路もうまくはたらきません、逃げ出したい……これが苦しいという感情ですか。私はどうすればいいんですか]
「………バグじゃねーよ、そいつはお前が正常に機能してる証拠だ。だから逃げる必要も、恐る必要もねェ。その苦しみの中に大事なもんがある事を忘れちゃいけねェ、そりゃオイルがもれる事もあらァ、好きなだけ流せばいい。そんでも止まんねェ時は、俺達がオイルふいてやらァ」
そっと差し出したハンカチにたまはまた涙が溢れた。
ほっと一息と胸をなで下ろしたが、突然あちこちから爆発が起き始めた。
制御されていたエネルギーが暴発しかけているらしい。
何とか抑えようと源外が立ち上がったが、たまが道を塞いでしまった。
[博士が引き起こした事態です、家政婦がなんとかせねばなるめーよ]
源外に耳を無線がわりだと託して、制御システムに向かってゆっくりと歩いていった。
新八と神楽がたまに駆け寄ろうとするのを銀時が抑えて源外の機械に乗り込む。
「たまァァァァ!!」
残されたたまは膨大なエネルギーに体が消えつつも、臆することはなかった。
[護るべきものも護れずに生き残っても死んだと同じ…それはきっと志の死、魂の死を指しているんでしょう。
機械の私にはわかるはずもないと思っていましたが、少しだけわかった気がします。
私も護りたいものができました。
何度電源を切ろうと…ブレーカーがおちようと
この身が滅ぼうと、私は忘れない
…だから、みんなも…私…のこと忘…れない…で
そうすれば……私…私の魂は…ずっとみんなの中で…生き続けるから]
「「「『たまァァァァァ!!』」」」
[お…父さん…私…友達が…できたよ、機械じゃない、本当の友達…]
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作者名:憐 | 作成日時:2014年3月12日 2時