四十八、依頼遂行、あるいは傍若無人な名探偵の文句 ページ49
「詩房ちゃん、聞いてる? 」
「え、あ、敦何か云った? 」
「乱歩さん、凄かったねって」
「聞いてなかった。ごめん」
顔を上げた詩房が慌てて謝る。不審に思いつつも、敦は次に太宰に矛先を向ける。
「真逆全部、中てちゃうなんて『超推理』本当に凄いです」
「半分、くらいは判ったかな」
「事件の真相、ですか? 」
太宰の言葉に、首を傾げる敦の隣で、詩房が問う。
「事件の真相? 」
「先刻のだよ。乱歩さんがどうやって推理したか」
「え? だってそれは能力を使って・・・・・・」
揃ってきょとんとする二人に、太宰は云う。
「君たちはまだ知らなかったか。
あのね実はね、乱歩さんは能力者じゃないのだよ」
目を点にし、素っ頓狂な声を上げる詩房と敦。
「乱歩さんは能力者揃いの探偵社では珍しい、何の能力も所持しない一般人なんだ。あと、ああ見えて二十六才だよ」
太宰が付け加えた情報に、さらなる衝撃が新人たちを襲う。あの態度とビジュアルで二十六とは。子供の心というのはいつまでも持ち続けられるものらしい。尤も、あんなに賢い子供がいたら生意気すぎて胃痛がしそうだが。
「本人は能力を使ってる心算みたいだけど」
「でも・・・・・・どうやって事件の場所や時間を中てたんです?! 」
敦の問いに太宰は自分が推理できた部分を語っていく。論理的に説明される事柄に詩房が頷く。
過失とは云え、恋人を撃った。聴取室では語られなかったその事実。場に沈痛な空気が落ちる。
警察署の扉をくぐると、天上天下唯我独尊、傲岸不遜で自分勝手な名探偵が、夕日を背にして立っていた。
異能力とは、現象だ。規模や性質に差はあれど、そこに違いはない。本来ならあるはずの原因や過程を、超常ですっ飛ばして、結果をたたき出す力。
だからこそ、異能力者集団、武装探偵社の中にあって、超人的な頭脳と云う、自らの力で結果を出していく乱歩を、皆尊敬しているのだろう。
「さて、二人ともこれで判ったろう? 」
「何がです? 」
「乱歩さんのあの態度を、探偵社の誰も咎めない理由がさ」
彼らが後を追う我儘な名探偵は、またもや、菓子がなくなったと文句を云った。
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犬原(プロフ) - 織川さん» ご感想ありがとうございます。作品の更新を楽しみにしてくれている方が一人でもいることが分かり、とても嬉しいです。至らない部分もあるかと思いますが、よろしくお願いします。 (2018年4月7日 7時) (レス) id: 467c88039a (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - コメント失礼します! 犬原さんの文がとても素敵でいつも更新を楽しみにしています。占いツクール作者の中では犬原さんの小説が一番好きです。これからも応援しています! (2018年4月6日 20時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
犬原(プロフ) - 石橋さん» コメントを下さってありがとうございます。自分の文章を好きだと言ってくださる方がいて、作者冥利に尽きます。まだまだ未熟ですがこれからも精進していきたい所存ですので、よろしくお願いします。 (2018年3月23日 14時) (レス) id: 467c88039a (このIDを非表示/違反報告)
石橋(プロフ) - コメント失礼いたします。密かにですが、犬原さんの作品が好きで追いかけさせてもらっている者です。いつも美麗な文章と原作の雰囲気を自分の物にするストーリー展開に惚れ惚れしています。ご自身のペースで執筆作業を頑張ってください!応援しております。 (2018年3月23日 1時) (レス) id: 1d9b4e262e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:犬原 | 作成日時:2018年3月21日 14時