夜を呑む (ページ50)

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自分の愚かさに思わず失笑する。
最低だ。
日向くんは中学時代、部員が少なくて"部"として活動できず、まともに練習できなかったと聞いていた。
初心者同然の子に、私は何を求めているのだろうか。
マイキー達だったら弱くても見捨てない、落ちぶれたものだ、私も。

「第２セット始めます！！」

流れるように動く試合を見て、私は過去を思い返していた。
中1の夏、私の家から持ち出したラケットで、みんなでバドミントンをしたのを思い出した。
あの時はみんな私の仲間だった、ううん、今でもそう思ってる。
あの輪に私が入れたのは、今の私が在るのは、全部堅のおかげだ。

小学生の時、私はいじめられていた。
理由は簡単、私が小学校の受験に落ちた事に加えて無愛想で、勉強ばっかして根暗だったから。
お父さんとお母さんは私に勉強させるのが好きだった、私も勉強していれば将来なりたいものになれる、と教わったから、明るい未来を夢見て耐えていた。
そんな日々も3年ほどして終わりを告げた。

『泣いてんだろーが』

同い年の男子よりも大柄な背中が私の前に立った。
片耳にリングピアス、潰れたランドセルと金髪。
いわゆる不良と呼ばれる存在。
彼は龍宮寺堅、後に『ドラケン』と呼ばれる男だった。

堅は小3のクラス替えでたまたま同じクラスになり、いじめられていた私を庇い、守ってくれた。
私もこうなりたい、とその背中を見て憧れた。
いつしかかけがえの無い存在になった、私の恩人だった。
その時から男子は堅の暴力に平伏し、女子も堅に敢えて関わろうともしなかった。
男は力さえあれば人の上に立てた。

でも私達はそうじゃなかった。
どうしても力の差で敵わない、だから私は愛想良くする事を覚えた。
どうすれば好かれるか、みんなと仲良くできるか、いじめられないか考えた。
1人の子を見るのは、いじめられていた時の私を見ているみたいで悲しかった、だから助けた。
常に笑顔で居るようにした。

そうして出来上がったのが今の私、AAだ。
人に優しくするのも、ヘラヘラするのも得意。
だけど舐められるのは嫌い、あの時の惨めな自分に戻りそうだから。

「っしゃ！！！」

ようやく日向くんの調子が戻り、土曜日に見せた速攻を披露した。
コートの中でみんなが円陣を組み、声を上げた。
元に戻ったね、と潔子ちゃんが笑っている。
私はそうですね、と返した。