夜を呑む (ページ45)

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「俺と付き合ってください！！」

頭を下げる男子生徒の後ろには、彼の友人らしき男子が数人居る。
私達2人を指さしてアオハルだなんだと茶化す。
これで断るのは4回目になるな、と遠い目をした。

「あのさ」

「騒ぐなァ！！！」

私の言葉と共に坂ノ下商店の店主が店から飛び出してきた。
先ほどまで私達は坂ノ下商店の前で肉まんを食べて駄べり、店の中に居る澤村くんとスガくんと影山くんを待っていた。
そこで登場したのがこの集団(サッカー部)
龍くんのクラスに教科書を取りに行ってからしつこさが悪化して、1年の時に3回振ったのにまた告白してきたのだ。
彼がすんません、と店主に謝り、店の中に戻ったのを見て、私はまた口を開いた。

「何回言われても付き合えない」

「でも俺、諦めないから…！」

「うん、その気持ちわかるよ」

もういつものように愛想を振りまけなかった。
笑顔を作るのが馬鹿らしくなって、段々と口角が下がっていく。
嫌いだ、心底嫌いだ。
私が好かれたいのはこんな人じゃない、わがままだってわかってるけど私を真剣に想ってくれる人がいい、彼の後ろで茶化している存在がよけいに気に食わない。

「私もずっと好きな人がいるの」

「え…そんなの1度も…」

「言ってないよ、だって振られたし」

「振られたのにまだ好きなの…？」

「うん？君も人のこと言えないよね」

ニコリ、と無理やり目を細めて口角を上げると、彼は反論できず黙っしまう。
不穏な空気を察してか、彼の取り巻きが駆け寄るようにこちらに近づいてくる。

「でもさ〜Aさん彼氏居ないんだよね？じゃあ付き合ってあげてもいいんじゃないの？」

「コイツ良い奴だから絶対惚れるって！」

「お前らその辺にしといてやれよ、Aちゃん困ってんだろ…」

「うっせーなハゲ！」

「ハゲじゃねえよ！！」

龍くんが私を庇ってくれるが、取り巻きと言い合いが始まってしまう。
じゃれているだけだが、いつもの光景がこれだったとしても私は一切笑えなかったし今すぐにでもこの疎ましい存在を消し炭にしてやりたかった。
あー、私も喧嘩強かったらなあ、ワンパンなのに。

「彼氏居ないってことはさ、俺にもワンチャンあるってことだよね？」

「シャバ僧に興味ねーよ…」

「え？」

「あ、やべ」

つい出てしまった言葉に私は口を押えた。
その場にいたみんなは困惑していたが、丁度いい機会だと思い、私は微笑んだ。

「ダルいんだよね、私喧嘩弱いやつに興味ねーから」