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「うおーっ、冷てぇ！！」
夜の海に足をつけ、水飛沫をあげてはしゃぐ男連中を、私とエマは砂に文字を書きながら見つめていた。
エマが砂の上で指をグルグルと動かしているのを見て、エマの前に堅ちゃん♡愛してる♡と書いてやった。
「わーーっ！！！」
「うおっ！！てめっ、マイキー！！」
エマが叫ぶと同時に、取っ組み合いをしていたマイキーがドラケンを海に沈めた。
マイキーがドラケンに追いかけられながら陸に上がり、それに続くようにドラケンも私達の前へと歩み寄ってきた。
エマは赤い顔をして砂の文字を手でかき消した。
「シケた面してんな」
「…えっ、だれ？私？」
ドラケンははあ、と長くため息を吐いてエマの隣に腰掛けた。
マイキーは私の前にしゃがんで、私の顔を覗き込む。
「なんかあったんか？場地と」
事情を知らないドラケンが私にそう訊いた。
何かあったわけじゃない、だって私の中ではいつも通りだったから。
「ううん、何もなかったよ。前日まで普通に夜も電話してたし…」
圭介に振られる前日のことを思い出す。
至って普通のいつも通りの日常だった、圭介に家まで送ってもらい、夜は寝るまで電話。
ただ変わったことと言えば、いつもより愛の言葉を言ってくれる回数が多かったぐらいだ。
いつもは私が大好きと言って、照れた圭介に圭介は？と聞くのがテンプレートだったのに、その日は圭介がよく喋ったのだ。
『A、好きだ』
『え？どうしたの急に。珍しいね』
『…別に。なあ、オマエは？』
『私も大好きだよ』
寝る前におやすみ、と言えば、おやすみ愛してると返してくれた。
別れる前だったから最後に言ってくれただけなのだろうか。
考えれば考えるほど、あの日に戻りたいと後悔が募り次第に涙が溢れ出す。
「何がダメだったのかなあ…二度と関わんなって言われちゃったよ私…」
私と我慢して付き合ってくれていたのだろうか。
私がわがままなばかりに、圭介を苦しめ続けていたのだろうか。
「無理して私と付き合ってくれてたのかな…」
「場地は何考えてるかわかんねーけどさ、Aのこと好きだったのは嘘じゃないと思うぜ」
マイキーの言葉にえ、と顔を上げる。
マイキーは優しい顔で私を見つめていた。
「だってアイツのAを見る目、誰よりも優しかったもん」
「そうかなぁ…私圭介に嫌われてなかったのかなぁ…」
「アイツが嫌いになるわけねーじゃん。今難しい時期だからさ、アイツ。本心じゃないと思う」
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作者名：くゎじゅ | 作成日時：2021年9月9日 1時
