夜を呑む (ページ39)

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「ねえ、龍くん」

「んあ？」

「教頭のヅラ吹っ飛んだってほんと？」

私の言葉に龍くんは、口に流し込んでいたドリンクを勢いよく吹き出した。
澤村くんが田中ァ！！と怒るので、2人で謝りながら急いで雑巾で床を拭く。
その間も龍くんは小声で、その時の状況を教えてくれた。

「えっ、澤村くんの頭に乗ったの…？」

「凄かったぞ、綺麗にポスって」

クスクスと2人で笑って片付ける。
見たかったな、と思いながらもその場面を思い浮かべて、澤村くんと気まずくなりそう、と1人でニヤニヤと笑う。
部活が終わってもそのニヤニヤは止まらず、私は澤村くんに近づけずにいた。

「勝負して勝ったら入れてください！！！」

体育館に響く声に私は肩を震わせる。
その声の主は追い出されたそうだ1年生2人ではなく、龍くんのものだった。
何だか懐かしいな、去年は龍くんの初対面プロポーズでビックリしたなあ。

「キャプテン！！！」

「ひっ！」

しみじみとしていると、再び聞こえた大きな声に今度こそ私は驚いて、思わず声が出た。
力くんにデジャブだ…と笑われたので、睨みつけておいた。
龍くんとスガくんと澤村くんが体育館から顔を出して、先程の声の主と話をしている。
力くんはモップを持ったまま呆れたように言った。

「田中も大概だけど、あの2人も中々だよな…」

「澤村くんにカツラ」

「やめて！！！」