夜を呑む (ページ29)

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「見苦しい所をお見せしました…」

あれから泣き続ける私を澤村くんはずっと見守っててくれて、更にはジュースまで奢ってくれた。
圭介がよく飲んでいた炭酸飲料だった。
先ほどまでの醜態を忘れるように、水蒸気で濡れたペットボトルの表面を拭う。
いつの間にか澤村くんは私の隣に座っていた。

「気にすんな、むしろ俺らも気づかなくてごめんな…」

「あ、いえ…大丈夫です…」

気まずい。
と〜〜〜てつもなく気まずい。
たぶん私圭介とか言ってた気がする、やばいぞ未練タラタラじゃんいや実際そうなんだけど。
どうすればいいこの空気。
めちゃくちゃ泣いてスッキリしたけど今ある意味モヤモヤしてるよ助けて潔子ちゃん…！！

しばらくの沈黙を破ったのは、私のポケットに入った携帯の着信音だった。
ディスプレイに表示されたのはお母さんの文字で、時間を見れば23時を回ろうとしていた。

「うわっ、もうこんな時間！？すみません私帰ります！！」

「えっ、まじか！！」

私は急いで電話に出て肩と耳で携帯を挟んでバイクのスタンドを上げる。
澤村くんにありがとうございました、と告げて公園の外までバイクを押す。

「気をつけて帰れよー」

澤村くんの声に振り返ると、彼は笑って小さく手を振っていた。
私も手を振り返してバイクに跨る。
母に今から帰る旨を伝えて通話を切り、ハンドルにかけてあったヘルメットを被り、エンジンをかける。
ギアを1速に入れてアクセルを捻る。
少し走った後にクラッチレバーから手を離し、シフトアップして速度をあげる。

バイクに乗っていて、1番気持ちよく感じるのは夏の夜の風だ。
馬鹿みたいに泣いてスッキリした、これで学校は上手くやれそうだ。

「A！！」

「心配したんだぞ！！」

「ごめんなさい…」

「またアイツらみたいなのと関わってるんじゃないだろうな！！？」

家に帰ると母が泣き崩れ、父が怒号をあげる。
アイツらみたいなの。
きっとマイキー達のことだろう。
前まではお父さんも圭介達のこと快く受け入れてくれたのに。
私はいけないことをしていたのだろうか、みんなと仲良くしていたのはいけないことなの？
大切な私の友達なのに。
連絡しなかったのが悪いとわかっていても、気分は海底に沈んだように重苦しかった。