夜を呑む (ページ24)

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６：先駆ページ24

入学して2ヶ月ほど経った。
先輩方も優しく、同級生のみんなも私と仲良くしてくれる。
みんな最初はよそよそしくて、特に初対面プロポーズの人とメッシュ前髪の子は少し時間がかかったが、帰りにみんなで駅まで送ってくれるようになった。

「龍くんおはよう」

「おっ、オハオハオハオハヨウ！！」

前言撤回、龍くんはまだ堅苦しい。
この頃になってようやくみんなの事も"仕方ないこと"だと思えるようになり、閉まっていた写真も思い出の一環として飾れるようになった。
最近はポニーテールにする時は三ツ谷が作ってくれたエマとお揃いのシュシュを使ったり、みんなが誕生日にくれたアクセサリーをつけたりすることもある。
ようやく乗り越えて前に進めたと思った。
だがその状況は一変してしまう。

夏休みに入り、烏養監督が戻って来たのだ。
スパルタで練習が厳しく、3年が引退してあっという間に他の1年2人が辞めて、力くんに続き、久志くん、一仁くんが練習に来なくなってしまった。

龍くんやノヤくんが必死に説得するが、それも無駄に終わってしまう。
私もとても辛かった、せっかく仲良くなれたのに、夏休みが明けて声をかければ気まずそうに目をそらされる。
家に帰れば写真達を見てみんなを思い出して、眠れぬ夜を過ごす。
逆戻りだった。

「Aちゃん！！大丈夫！？」

「えっ、あ…」

スクイズボトルに吸い込まれる流水を眺めていると、焦ったように潔子先輩に名前を呼ばれる。
気づけば水が溢れ出し、中に入ったスポーツドリンクの粉も一緒に流れ出ていた。
すみません、と謝り中身を捨てて入れ直す。

「大丈夫？最近隈も酷いし…眠れてないの？」

「あははっ、ちょっと…」

「何かあったら相談してね、縁下達のこと、私もちょっと気にかけてるから」

潔子先輩にありがとうございます、と返す。
こう言ってもらえるのはとても有難かったが、どこから何を話せばいいかわからないし、結局何も言えなかった。