夜を呑む (ページ18)

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思っていたよりも綺麗な校舎だった。
ただ、駐輪場の屋根や渡り廊下の柱が所々錆びていた。
一直線の校舎で、体育館は2つあり、アパートのような構造の部室まであった。
公立にしてはいい設備なのではないかと思った。

「本日は寒い中お越しくださりありがとうございます。ただ今より烏野高校の説明会を始めます。まずお手元にある資料をご覧下さい」

説明会は講堂で行われたが、さすがは公立らしく暖房器具は電気ストーブのみだった。
冷えた足先を擦り合わせて寒さを凌ぎ、教師や生徒達の説明を聞く。
説明会が終われば部活見学があり、そのまま講堂で吹奏楽部と軽音部の演奏を聴いた。
その後は集団で歩いて各部活動を見学して解散した。

「いーーち、にぃーーい」

自動販売機でジュースを買って帰ろうとすると、男の人の集団が掛け声をして走りながら目の前を横切る。
それを見届けてジュースを買い、水道に持たれながらジュースを一口、口に含む。
至って普通の学校だった、特別魅力も感じないし今まで行った高校となんら変わらない。

「すいませ〜ん！」

偶然足先に転がってきたボールが当たり、それを拾い上げると男の人がこちらに駆け寄ってきた。
どこかで聞いたことがあるような声だな、と思ったが顔を見たが全く知らない人で余裕で初対面だった。
私はその赤と白と緑のボールを拾い上げて、体操服を着たその人に手渡した。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「頑張ってください」

「あ、はい、アザっす」

明らかに年上なのに敬語を使うその人を見て、礼儀正しいなと思った。
女慣れしていないのだろうか、少し頬が赤かった気がする。
バレーボールを拾いに来たからバレー部の人なのだろうか。
やけに大人っぽく見えたし、きっと顧問の先生なのだろう。
体育館が使えなくて外で練習するのは不便だなと思った。
大変そうに。