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訪れる ページ2

「これでチェックアウトは終わりですわ。」

前の客はチェックアウトか。

ま、俺はチェックインだから急ぐ必要もないし、気長に待つか…。

にしても、あの女の後ろの棚…蝶、か。

「少しお時間はございますかしら?もしよろしかったら運気を上げるおまじないでも、と思うのですが、いかがでしょうか?」

おまじない…ここの名物か?

女がおまじないを始めた。

単純な術式だ。

いや…。

「…!!」

あいつ…!



「それでは、またのお越しをお待ちしておりますわ。」

前の客が出てったあと、女はすぐに俺のもとに来た。

「ようこそお越しくださいました。何泊をご希望でいらっしゃいますか?」

「2泊だ。」

それを言いながら、かばんの中からある瓶を取り出す。

それも、特殊な瓶。

「え…?」

掲げると、真っ赤な蝶が瓶の中に現れた。

「ほらよ。俺のチェックインの間に蝶が逃げちまうだろ?」

女は驚きつつ、俺が差し出した瓶を受け取った。

「ありがとう…ございます。あ、銃をお持ちなんですね。こちらの書類をお書きくださいませ。」

俺が書いてる間、女は瓶を丁寧に棚に置いた。

驚いているようだな。

ま、仕方ないか。

「ありがとうございます。エリスタエル・ベイティ様、ですわね。それではお部屋にご案内しますわ。」

案内されたのは2階の質素な部屋。

素朴だが、綺麗だな。

こいつの性格か…。

「わからないことがございましたら内線でいつでもお知らせくださいね。それではごゆっくり。」

「おい待てよ。」

閉じられようとした扉をぐっ、と押さえる。

「仕事が終わったらでいいわ、俺んとこ来い。」

「あ…あの、お客様のご私情にわたくしが介入するわけにはいかないのでそのようなことはご遠慮を…。」

「客が言ってるんだ、来てくれるよな?なに、悪いことはしない。」

誰にも聞かれないようにそいつの耳元で言う。

「嫌われ者どうしの話だ。わかってんだろ?」

女はくす、と笑うと、笑顔で答えた。

「かしこまりました。わたくしの仕事が終わり次第、お伺いしますわ。」

さて…。

まさか偶然入った宿で採集家と会うとは。

面白くなったな…。

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作者名:円香 | 作成日時:2018年8月7日 16時

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