私、自分嫌いなんで５【俺のスカート、どこ行った？】

君澤の過去 ページ38

君澤side

私が産まれたのは、ごく普通の家。
特別お金持ちでもなければ、お金が無いわけでもなかった。

両親も仲良くて、ご近所さんとも、友達もいて全然幸せな人生を過ごしてたと思う。

でも……弟の陸が産まれて……私が小学校卒業を前にした時期だった。

その日は中々眠れなくて何か飲もうとリビングに向かっていた時だった。
リビングに明かりが灯っていたので静かに覗いた。中には帰りが遅い父親を待つ母親がいた。

私が入ろうとした時、今まで聞いたことない…母親の心の声が聞こえてきた。

母｢最近……夜遅くまで帰ってこないし…っ｣

母親の顔は今までにないほど悲しみと怒りが現れていた。

私はリビングに入るのを辞めて静かに部屋に戻った。
きっと、この日からだったかな……。
私が2人の本音を聞き続けたのは……。

ある日は父親の本音を……。またある日は母親の本音を…。

でも、私たちの前では仲がいいように振る舞う2人を見て苦しくなった。
『本音で伝えないと…何も変わらないのに』と思った。
だから、私は決めたんだ。
2人が言えないお互いに対する本音を私が伝えてあげようと。

でも、その時の私は『これで今までの仲良しな2人に戻ってくれる』とばかり思っていた。

私がこぼしたお互いの本音が……この幸せだった家族を壊してしまうことに。

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