【BTS】はじまりのおと【男主】 (ページ10)

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？「あぁ驚かせたかな、すまないね」

そう言って優しげに微笑んだ男の人は、雨に濡れている僕の方へ傘を傾ける

「大丈夫です」

傘を相手に突き返したが、お人好しなのか放っておいてくれないみたいだ

？「風邪を引いてしまうよ」

「…風邪引いて学校を休みたいくらいだ」

変わらず傘をさしてくれた男の人は、僕の小言を聞いて驚いた顔をする

何故か少し考える素振りをした後、思いついたかのように僕へ近づき手を取った

？「せめてあそこにある屋根付きのベンチに行こう」

有無を言わせず立ち上がらされて、鞄ごと引きずられる

彼は僕に傘を貸していたから濡れているのに、先にハンカチで僕のことを拭った

「…ありがとうございます」

？「気にしないでくれ。むしろ君の歌を盗み聞きしてしまって悪かったよ」

改めて先程の下手くそな歌を聞かれていた事に恥ずかしくなる

忘れてくれたほうが僕はたすかるのに

？「あれはどこの国の歌なんだい？」

ベンチに腰掛けて彼が僕に聞く

「日本の歌って事しか知りません。…母がよく歌ってくれたんです」

？「素敵な歌声だったよ。ただ……」

彼はそう続けると言葉を詰まらせた

下手なのに無理に褒めようとしてくれたからだろうと申し訳無さが込み上げる

？「…君は歌うのは好き？」

「好き…だとは思います」

ボタリと水気を含んだ髪から水滴が垂れ、それを見た彼はまた僕を拭う

見ず知らずの子どもに…優しい人だな

？「そうか、ならいいんだ」

ニコリと微笑む彼に僕は首を傾げる

？「ところでさっき、学校を休みたいって言ったね。何かあったのかな？」

僕は悩んだ

何も知らないこの人に、相談していいのだろうか

家族にも打ち明けていないのに

「…その、えっと……」

なかなか言い出す事の出来ない僕

？「私の名前はパン･シヒョク。君は？」

「『高(こう)初音(しおん)…じゃなかった』コ･シウォンです」

PD「もしかして日本人？」

まずい、癖で日本名を応えてしまった

反日派の人だったら騙したなんて言ってくるかもしれない

この場で罵られたり、学校の人達みたいな目で僕を見るんだろうな

でももう遅い、間違えたのは僕だ

「父が日本人で、母が韓国人です」

PD「ハーフなんだね」

「は、はい」

特にこれと言って反応がなかった

それに少し戸惑って「あの、日本嫌いじゃないんですか？」なんて変な質問をしてしまう

PD「僕は日本好きだよ」

彼は笑って返してくれた

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