◆.幼馴染み、からの。 ページ8
「Aー」
「うわ、」
帰宅中。
後ろからぐ、とかけられた体重に思わずつんのめりそうになって、踏ん張る。私は、後ろの重たい金髪頭をじろ、と睨んだ。
「ちょっと……やめてよ上鳴、重いんだけど」
「うわひっでー」
「あんたの個性使ったあとのアホ顔よりかはマシでしょ」
ふん、と鼻を鳴らしてぺいっと剥がす。
上鳴は可愛いげのないやつ、と口を尖らせながらも私に着いてくる。
……否、着いてくる、ってのも可笑しな話か。
家が近所なのだ。
というか、お隣。
当然家族ぐるみの付き合いもあるし、つまるところ私達は幼馴染み、である。
「一緒に帰ろうぜ」
「え、……ヤダ」
「何でだよ。
嫌って言われても着いていくし」
そりゃ家も隣だから、まあ仕方ないか。
別に本当に嫌な訳じゃない。腐れ縁としてのおふざけの会話だ。
隣を歩くアホ男にちら、と視線だけ投げ掛けてみる。
こいつは何も考えてなさそうだよなぁ。
思わずじ、と見ていると、ばち、と上鳴と視線が交わる。その目はやけに熱が籠っている気がして、思わず息を詰めそうになる。
「……上鳴さ、」
「ん?」
言うべきか迷って、結果私は、口を開いてしまう。
「……っ、個性使ったあとの顔、なんとかした方が良いよ」
「さっきも聞いたわ!」
「ごめん、なんか上鳴の顔見てたら、それしか思い浮かばなくて」
そう言えば、上鳴はなんだよ、と本当に不貞腐れてしまう。ごめんごめん、と言いながら、私はその背中を叩く。
小さい頃から一緒だった幼馴染みの背中が想像以上に大きくて、ほんの少しだけ＿＿＿＿＿。
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作者名：風を薙ぐ硝子売り x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年9月16日 23時
