04.現在(緑谷) ページ5
side緑谷
「うるせェ！！お前だって無個性のクセにいつもフラフラしやがって！！クッソムカつくんだよ！！」
いつの事だったろうか。
いつものようにかっちゃんに、ヒーローは諦めろ、と言われた僕を庇ったAちゃんが、かっちゃんに怒鳴られた。
初めてだった。
当のAちゃんは、憧れのかっちゃんに無個性を馬鹿にされたことと、今までの2人の関係に突然入った亀裂にただ息を飲むことしか出来ないでいた。
「やめなよかっちゃん！！Aちゃんだって…！！ 「うるせェデク！！」
僕の制止はかっちゃんによって阻まれる。
「この際だから言うけどなァ…お前ら2人無個性がわちゃわちゃ固まって戯れててもなァ、ヒーローになんてなれねぇんだよ！！」
「そんなこと！！ただ事例がないってだけで…」
いくらでもチャンスはある。
いや、意地でもむしり取ってやる。
そう言おうとしたのだが。
「ハッ！？無個性のお前らに？チャンス？そうだな！ずっと待ってればいいんじゃねェか！？まァ生きてる間には来ねぇだろうけどな！」
かっちゃんの後ろにいる子達も一緒になって笑い出す。
悔しい。
でも僕の力じゃかっちゃんには勝てないから。
派手で強力な個性を持った彼には、到底叶わないから。
歯を食いしばって耐えるしかなかった。
それなのに。
「そうだね…ごめんね。かっちゃん。今まで”無個性の下らないヒーローごっこ”に突き合わせて。」
口を開いたのは、正気に戻ったAちゃんだった。いや、これは正気と言えるのだろうか。
少なくとも、僕の知っているAちゃんでは無かった。
「行こう、いずく。」
黙って僕の手を引き夕暮れの公園を後にする。
後ろを見るとただ口を開けて去っていく僕達の背中を見ているかっちゃんがいた。
あの日。
初夏の香りの漂う小学4年生のあの時期から。
Aちゃんは、いつもみたいに明るくて華のある笑顔を振りまくことはもう無かった。
『かっちゃん』
いつも笑顔で呼んでいたその声を、その表情を。
1度も聞くことなく。
春。
僕らは中学生になる。
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筍(プロフ) - 波瑠さん» ありがとうございます (2019年3月21日 1時) (
レス) id: 1e3fb893f2 (このIDを非表示/違反報告)
波瑠(プロフ) - 18席と推薦に２席で２０人 (2019年3月1日 19時) (レス) id: 977f6c68bb (このIDを非表示/違反報告)
筍(プロフ) - ロムさん» 楽しんでいただけて幸いです (2017年7月12日 0時) (レス) id: 515ac75390 (このIDを非表示/違反報告)
ロム - 作者様の小説のおかげです。ありがとうございます！ (2017年7月9日 19時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
ロム - ああっ！更新されてる！とパソコンの前で叫んだ私は、今日も正常に動いています。 (2017年7月9日 19時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：筍 | 作成日時：2017年6月19日 1時
