27.轟焦凍 ページ29
saidA
その少年とは、それ以来頻繁に会うようになった。会うようになったというと変かもしれないが、遭遇、と言った方がいいかもしれない。
あの住宅地あたりは彼のランニングコースらしく、たまたま時間が合った日は二人で並んで走った。
はじめは並ぶつもりなんて無かった。
競争心の強い私は、前を走る彼を見てなんとなく追い越したくなった。
すると今度は彼が私を追い越そうとしてくる。
やはり男子の基本の身体能力は格段に女子の上を行く。抜かしたり、抜かし返したり。そんなこんなで公園につくのだが、息が上がっているのは決まって私だけだった。
特に何なのかは分からないがその競争から芽生えた何かは確かにあって、気付けば彼は大切な話し相手になっていた。
最近出久は何かと忙しくて、まるでどこか別世界を見ているようだった。
勝己とはあれ以来話してすらないし、その二人の他に友達などいない。
ということで三人目の友達、轟焦凍が、今1番近い友達だった。
轟には、なんでも話せた。
同じ学校ではないということもあり、何も気にすることなくありのままをさらけ出せた。
時にもたわいもない話で笑ったり、学校のやつらの愚痴を言ったり。
気付いたら、公園の二つ並んだブランコで轟と話すことが日課になっていた。
轟は基本的に黙って、時には頷いたりリアクションしながら私の話をいつも聞いてくれた。
だが自分の話はなかなかしてくれなかった。
家庭のことや個性の事を聞き、何度彼に上手くはぐらかされた事だか。
数えようとすると数も忘れるくらいの回数だった気がする。
そんな彼が一つだけ教えてくれたこと。
｢俺は、雄英推薦で受ける｣
お前、高校生どこ行くんだ。
聞かれた言葉に答える前に、轟は言った。
一瞬嫌味かと思ったが、彼はそんな人ではない。天然なだけだ。
きっと思った事をそのまま口に出しただけだろう。
『私は個性まだ扱えてないし…一般入試かな』
｢どこのだ？｣
間を開けずに轟が聞いてくる。
『え？雄英』
｢そうか｣
少し驚いてから言う轟くんの頬が、確かに緩んだ。
｢お前勉強出来なさそうな顔してるのにな｣
『それは酷い。こう見えてもＳ判定の行列です』
お互いに数秒顔を見つめ合って、しばらくして私が吹き出し、轟がクスリと笑った。
｢轟って笑えるんだね｣
『俺をなんだと思ってるんだ』
そういう轟の顔はいつもの真顔に戻っていた。
彼の笑顔が頭から離れない。
ああいう顔して笑うのか。
新発見だ。
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筍(プロフ) - 波瑠さん» ありがとうございます (2019年3月21日 1時) (
レス) id: 1e3fb893f2 (このIDを非表示/違反報告)
波瑠(プロフ) - 18席と推薦に２席で２０人 (2019年3月1日 19時) (レス) id: 977f6c68bb (このIDを非表示/違反報告)
筍(プロフ) - ロムさん» 楽しんでいただけて幸いです (2017年7月12日 0時) (レス) id: 515ac75390 (このIDを非表示/違反報告)
ロム - 作者様の小説のおかげです。ありがとうございます！ (2017年7月9日 19時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
ロム - ああっ！更新されてる！とパソコンの前で叫んだ私は、今日も正常に動いています。 (2017年7月9日 19時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：筍 | 作成日時：2017年6月19日 1時
