26.少年 ページ28
saidA
家を出て折り返し地点まであと半分というところまで来た。
元々、体力にはわりと自信のある方だった。
個性の無い…無い、と思い込んでいたあの頃の私は、とても個性を使わずに生きていくには色々と不便だった。
例えば複数人に囲まれたり追いかけられたりした時は自分の身体能力に感謝する事になった。
それにしても、”器づくり”がこんなランニング程度で良いのだろうか。
念の為ジムなんかにも行っておこうか。
悶々と考えを張り巡らせながらひたすら走っていると、折り返し地点に着く。
そこは小さい頃たまに3人で来た、隣町の公園だった。
3人というのは、私、出久、そして勝己だ。
目標は高く、というからあえて隣町の此処まで設定していたのに案外すんなりと着いてしまった。
あの頃は迷いながら半日も潰したのに。
時の流れとは恐ろしいものだ。
10:20
公園の錆びた雰囲気に似合わないデジタル時計がジージーというような音を立てて数字を増やした。
隅にある自販機で小さめのペットボトルを買って飲み干す。
大きめだと飲みきれなくて持ちながら走るのが面倒だが、この大きさで130円は高い。
かわいた喉に染み渡るスポーツドリンクに果たしてその値に合った価値があるのか考えながら、家へ向かった。
その少年と出会ったのは、家まであと十数分というあたりの所だった。
並んだ住宅と、高い塀。
ミラーも付いていない曲がり角で私たちはぶつかった。
なんてありがちなシチュエーションだろう。
『わ』
｢あ｣
お互いに一言だけ発して、視界が揺らぐ。
私と彼はほぼ同じタイミングで後方に倒れた。
｢悪ぃ｣
いつの間にか立ち上がった彼が大丈夫か、と手を差し伸べてくる。その手をとって立ち上がった。
『いや、こちらこそ不覚だった。ごめん』
ランニングウェアに付いた砂をはらいながら言った。
じゃあ、とそのまま彼が走っていこうとしたので私も家に向かってまた走り始めた。
赤と白で髪色が二色にわかれた、左目の周りに傷のある美少年だった。
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筍(プロフ) - 波瑠さん» ありがとうございます (2019年3月21日 1時) (
レス) id: 1e3fb893f2 (このIDを非表示/違反報告)
波瑠(プロフ) - 18席と推薦に２席で２０人 (2019年3月1日 19時) (レス) id: 977f6c68bb (このIDを非表示/違反報告)
筍(プロフ) - ロムさん» 楽しんでいただけて幸いです (2017年7月12日 0時) (レス) id: 515ac75390 (このIDを非表示/違反報告)
ロム - 作者様の小説のおかげです。ありがとうございます！ (2017年7月9日 19時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
ロム - ああっ！更新されてる！とパソコンの前で叫んだ私は、今日も正常に動いています。 (2017年7月9日 19時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：筍 | 作成日時：2017年6月19日 1時
