72.誘い ページ25
saidA
「なぁ、この世界が憎くないか?お前を見捨てたヒーローが」
呼吸の仕方を忘れてしまったかのように苦しく、脳内は異常な位に乱れている。視界がグラグラしていて、言葉を紡ぐことも出来ない。
瞬きをしてしまえば、映し出されるのはあの日の光景。広がる血溜まり。動かない両親。
悪意に満ちた集団がこちらに寄ってくる足音。
『あっ、やっ、』
思わず耳を塞いでその場にうずくまろうとする私の両腕を、死柄木が今度は指を5本つけずに思い切り掴みあげた。左の傷を触らないでくれているのだけが、唯一の救いだ。
「ほら、ちゃんと聴けよ。お前はあの日呼んだんだろう?『オールマイト助けて!』って。それでもアイツは来なかった。いくら呼んでも。そのせいでお前の両親は死んだんだ。おかしいよなぁ?正義のヒーローだとか平和の象徴って呼ばれて、まるで救えなかった人なんていないかのようにヘラヘラ笑ってやがるんだぜ!?おかしいよなぁ!?」
最後の方になるにつれてどんどん声を荒らげていく死柄木。私の意識はもう飛ぶのではないかというくらい朦朧としていた。
「ちょうど脳無がやられちまってショック吸収欲しかったんだよ。それに自分の生徒に自分の攻撃をそのまま返されるアイツの気持ち…考えただけで笑えてくるぜ「A!!!!」
早口で捲し立ててくる死柄木の声に被せるように、廊下に尾白の声が響いた。
呪縛が溶けたかのように声の向きへ振り返り、一気に体中の力が抜けてその場にへたりこんだ。
「お、じろ…」
「A大丈夫!?」
待って、尾白、こっちに来ちゃ行けない気がする。危ないよこれ。
私が口に出す前に、私からいつの間にか手を離した死柄木が黒い渦の中に吸い込まれていった。
「残念だなぁAA」
その場に、やけに気味の悪い声を残して。
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筍(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!!嬉しいです!!頑張ります!!(TT) (2018年1月4日 2時) (レス) id: 515ac75390 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - 更新楽しみにしています!頑張って下さい! (2017年12月2日 11時) (レス) id: 95fb949c38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:筍 | 作成日時:2017年9月10日 5時