弐 ページ23
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誰もが口を閉ざす中、悲鳴嶼様は見えぬ目で一同を
「馘首などではない。皆にはこれからやって来る冨岡を笑わせて欲しい。その為に相談の時を取ったまでだ」
思いもよらぬ言葉に仰天しなかったのは時透くんだけだろう。ボクですら言葉を失ったよ。
『ちょちょちょちょｯ待って下さい悲鳴嶼様！！
確かに皆様に相談しようと伺っておりましたが、直球過ぎやしませんか！？』
「む？」
「あ、雪村だ」
ボクの叫びでようやくこっちに興味を持った時透くんだけどごめん、気にしてられません！
「ハァ？冨岡を笑わせろ？なんだって、そんな真似しなきゃいけねぇんすか！？」
ほらほら、一番突っかかってきそうな人が来ましたよ！
どうするんですか、悲鳴嶼様！！
「それが、お館様の望みだからだ」
ごく平板な声色でそう告げた悲鳴嶼様は、先刻お聞きしたお館様・産屋敷
...＊
「冨岡さんの笑顔が見たい、ですか？」
胡蝶様は復唱し小首を傾げる。
「ああ。お館様は、冨岡が全く笑わぬことを気になされていた。そして、私と雪村に申されたのだ」
「そう言われてみれば、冨岡さんの笑ったところって、見たことないかも……どんな顔で笑うのかしら」
甘露寺様の何気ない疑問。だがしかし貴女は気づいていない。この一言で蛇柱様の機嫌が急降下したことを。
「俺は、アイツが笑った顔も見たことねぇけどな………てか、なんで冨岡だけなんだ」
宇髄様は珍しく小さな声で呟き、庭にまた興味の移った時透くんに目を向けた。
この意見には確かに同意見。
ぼんやりと庭を見つめる彼、時透無一郎くんも恐ろしく無表情だからだ。
詳しい事情は分からないが彼の表情筋が動いたところは稀で、
余談は置いといて。
ボクもお館様のお言葉を聞かなければ同じ疑問を持っていた。
お館様が仰るには、時透くんは本当の自分を思い出せば必ず笑えるようになるが、冨岡様は自分で自分を追い込んでいるから望んで後ろを向いているから笑えないのだと。
彼に限らず、柱様の半分の方々は愛想が良い方ではない。
それでも成り立っているのは柱としての自負があるから。
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