拾壱 ページ19
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炭治郎side
この短時間に理解できないことが多すぎた。
上弦の鬼が現れたこと。
姉が鬼であること。それも鬼舞辻とは違う鬼であること。
煉獄さんと姉さんが必死に戦う中、
己が何の役にも立てず呆然と見ていたこと。
煉獄さんと鬼の大技に姉さんが突っ込んでいく光景を、俺はただ見ていることしか出来なかった。
姉さんが煉獄さんを庇い腹を貫かれた。
鬼が背を向けて逃げる姿に、俺の沸点は激しく振り切れた。
無意識に駆け出し刀を拾い振り上げ投げつけていた。
それは鬼の背中に命中する。
それでも止められない。
止まれよ……逃げるなよ……
「逃げるな卑怯者!!」
俺は喉が擦り切れるのも構わずに 逃げるなと叫んでいた。
「いつだって鬼殺隊はお前らに有利な夜の闇の中で戦ってるんだ!!
生身の人間がだ!!傷だって簡単には塞がらない!!失った手足は戻ることも無い!!
逃げるな馬鹿野郎ッ!!馬鹿野郎ォ!!」
奴の姿が見えなくなっても、俺の叫びは止まらない。
「お前なんかよりッ
煉獄さんや姉さんの方がずっと強いんだ!!強いんだ!!
煉獄さんは負けない!!
姉さんも負けない!!
誰も死なせなかった!!
戦い抜いた!!
守り抜いた!!
お前の負けだ!!
煉獄さんと姉さんのッ 勝ちだぁ!!
うああああああああ!!!」
言葉にならない思いは、叫びと涙で溢れて止まらない。その場に踞る。
最後には嗚咽と泣き声に変わっていた。
そんな俺を煉獄さんは優しい眼差しで見つめ
もう叫ぶなと、傷に響くと、最後まで労わってくれた。
炭治郎side 終
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