拾 ページ18
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『煉獄さん、手を離してください』
「断る」
『傷に響きますよ』
「お前もそうだろう」
『何を…
「たとえ傷が治ろうとも、無くした血は戻らない。もうそろそろ限界なはずだ」
！』
確かに血を流しすぎて今の状態を維持するのが難しくなってきた所だ。
それを当てられるとは、不覚。
「ここにいる者は誰も死なせない。
この責務を俺は全うする。
君が死んでは俺の負けになってしまうじゃないか」
穏やかに笑う彼にボクは酷く安心してしまった。
途端に体の力が抜け膝をついてしまう。
「君のおかげで少し休めた。ありがとう」
『煉獄さん……』
そんなことを言われたら止められないじゃないか。
煉獄はボクの前に立ち、大きく深呼吸する。
炎の呼吸 奥義！
『煉獄さん、やめ…』
ボクが止めるよりも早く、煉獄は特攻していく。
心のザワつきが収まらない。それどころか大きくなっていく。
駄目だ。
このままじゃ……
──────煉獄さんが死ぬ─────
脳裏に、大切な人たちの最期がよぎり、
ボクは無意識に手を伸ばしていた。
玖ノ型・煉獄！！
破壊殺・滅式！！
二つの大技がぶつかりあった瞬間辺りに砂煙と強風が起きた。
...
砂煙が止む中、
煉獄を庇って腹を貫かれるボクがいた。
背後で腹部を抑える煉獄。
全部は受けきれなかったか。
ボクの髪と目が元の色に戻る。
ああ、時間切れか。
「はっなせ！！」
貫かれているのはこちらなのに苦しそうに汗をかく鬼。だが、残念。
──離さないよ。
『ｯ煉獄ざん！！』
抑えてるから、とどめを。奴の頸を！
「オオオオオオオオオオ！！！」
察した煉獄は飛び出し渾身の刃は鬼の頸を捉えた。
だが、皮膚が硬すぎて刃が途中で止まってしまう。
空が明るくなりつつある。
それに気づいた鬼は焦ってボクの体を蹴り腕を引き抜く、同時に煉獄の刀身を折った。
煉獄は蹴られたボクを庇うように抱きしめ後ろに倒れ込む。
その隙に鬼は木々の方へ駆け出した。
『ぅぐ……(待てｯ…)』
ボクは薄れゆく意識の中、追いかけようと手を伸ばしたが届くはずもなく、落ちた。
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