壱 ページ26
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ボクの物凄く必死な形相にお館様は【柱候補】という扱いで折れてくださった。
呼吸使える兆しあったら速攻【柱】にされそう……
ホゥホゥ……
夜目のきく鳥が鳴いている。
いろいろしていたらこんな時間になってしまったか。
気疲れに肩を落とすボクは自然と蝶屋敷へ足を踏み入れていたことに気づく。
入口の前で足が止まった。
『っと(用もないのに来てしまった)』
傷の治りが早いボクはあまり蝶屋敷に来る機会が無い。
それでも来てしまうのは、
『……楽しそうだな』
遠くから微かに聞こえる楽しそうな声に目を閉じ耳を潜め、弟が生きている実感を噛み締める。
ふと、気配を感じて目を開けると
「ぅー」
妹に似た女児が首を傾げ立っていた。口元には竹のようなものが。
『ねず……いや、一回り小さいな』
あまりにも似ている風貌に幻覚かと思ってしまう。
女児はボクを視認すると目を見開き驚きを見せるとこちらに駆け出し、突っ込んできた。
『がふっ!』
それは鳩尾に命中、一瞬息が詰まったがなんとか踏みとどまることに成功。
「ぅー!」
女児はボクの腹部にしがみつき己の頭をグリグリと押しつけてくる。
痛みはそうでも無いが何ぶん苦しい。
てか、力強っ!
『ちょっ…お嬢ちゃんそれはやめてっ、地味に苦しい』
ボクの声に反応して顔を上げた。
「ぅ!」
何が不満なんだろうか、眉間にシワがよっている。
近くで見ればますます禰豆子に似ているな、この子。
ぼんやり眺めていると、女児がだんだん大きくなってボクの肩くらいの身長に……あれ?
『禰豆子?』
「う!」
彼女は満足そうに笑いボクに擦り寄ってくる。
本当に?本当に禰豆子なのか?
あれ、人間ってこんなに体格変えられたって?
──禰豆子は人を食べない鬼で……──
『あ、そっか』
そうだ。禰豆子は鬼になっていたんだった。
すんなり納得してしまう。
きっと、あの日 鬼の血が体に入ったのだろう。
だから禰豆子の墓が無かったのか。
二年前の謎がようやく繋がった瞬間である。
ということは、あの日に見た赤い月は鬼舞辻無惨のもの。
今更ながら背中が寒くなり身が震えた。
「ぅ?」
心配そうに見上げてくる妹が可愛くて頭を撫でる。嬉しそうに綻ばせる姿がとても愛らしい。
禰豆子。
人を気遣える優しい子。鬼になっても根本は変わらないのだな。
撫でる手が震える。彼女に気づかれる前に手を止めた。
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