漆 ページ16
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「……………………………すまん」
『なんだろうね。謝られたのに凄く傷つく感じ』
確かに男子用の服装だけど、女に見えないかなぁ……
おいこらそこ、哀れんだ目やめてよ。
肩に手を置くなぁ！泣くぞ。
「いやだってお前 胸が無『ぁあ？』……すまん」
獪岳さんや、今は素直に謝られた方が傷つくのよ。
……ねえ 笑ってない？俯いて反省してるように見せてるけど笑ってない？
もう嫌いだコイツ。
これくれた おじさんを恨みそうな勢いだわ。
ボクは岩場を飛び降り、ここから逃げるように足早に歩を進めた。
『……ついてこないでよ』
「無理だな」
相も変わらず後をついてくる獪岳。
違いといえば、大人しいということ。
今も無言で六尺ほど(約1.8メートル)後ろを歩いている。
ボクが女だと発覚してから人が変わったかのように大人しい「おい、クソチビ」…否、大人しくない。
なんですか。と嫌々振り返るボクに対し、彼の表情は真剣で険しい。
思わず息を飲む。自然と足が止まった。
「こっから先はお前みたいな中途半端な人間が行く場所じゃねぇよ」
『？』
何を言っているのか分からない。
瞬間
ザァア─────
ボクらの周りが藤紫色に染まった。
まるで隠れていたものが現れたかのように
これは、藤の花。
『綺麗…』
どこを見渡しても広がる藤の花畑。
まさに圧巻の光景に目を奪われる。
そんなボクの横を通る獪岳。
「お前に言ってなかったが、藤の花は鬼が嫌う唯一の花だ。
遭遇したくなかったら持ち歩くことだな」
すれ違いざまに吐かれた言葉には女のボクを労る色が含まれていた。
言葉は続く。
「ここから先は、鬼を滅する者だけが集う場所だからな」
彼の進む先、藤の花の少し奥に炎の揺らぎが見える。
『鬼殺隊……』
鬼を滅する団体。
もしかしたら、ここに炭治郎たちの手がかりがあるかもしれない。
ボクは、口を噛むと足を大きく踏み出した。
たとえこの先に同族が立ちはだかっていようと構わない。
ボクは、炭治郎達を今度こそ守りたいんだ。
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