一度は言ってみたかった ページ3
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『───立って歩け。前に進め。
あんたには立派な足がついてるじゃないか』
言いながら、“オレ”は彼女を背に歩き出した。
生身と機械、左右で違う足音が響いている。
砂漠に囲まれた街 リオール。
太陽神レトを信仰するこの街はコーネロという教主がトップにたっていた。
死せる者には復活を。
胡散臭さを感じたオレ達は参拝者の女性ロゼにお願いしてコーネロへの面会を希望。
コーネロは黒だった。
彼の指輪を触媒にした錬金術で崇拝者を騙していたのだ。
なんだかんだで見事 悪事を暴いたオレ達。
だいぶ派手にやったけどなんとか終幕させることが出来た。
コーネロへ神の鉄槌という名の脅しを落とし、ロゼが泣きながら何に縋ればいいと問うてきたから応えた冒頭のセリフ。
漫画読み返しながら何回も思ってたけど
一度は言ってみたかったんだよねぇ!!!
言えた達成感という名の快感に浸りながらも顔には出さないオレを褒めてほしい。ほんと。
あー、体痛い。
「もう、また体ボロボロじゃんか」
後ろをついてくる鎧姿の弟アルフォンスはため息を吐いている。
『しゃーねぇだろ?不可抗力って奴だ』
「それでも、“姉さん”は『 アル 』っ」
オレは立ち止まり、振り返りながら弟を見上げた。
『今は“兄さん”だ』
「……うん」
ごめん。大きな体を縮こませて反省の姿を見える弟にオレは近づきお腹あたりに拳をコツンと当てた。
『良いよ。でも人がいる時は勘弁な』
「はーい」
オレはニカッと笑ってまた前を歩き出した。
さっき拳を当てた時に聴こえた反響音。
あの鎧の中は、空洞だ。
魂を鎧に結びつけただけの危うい存在。
絶対に戻さなきゃ。
そのためにも、賢者の石を探す。
今回は偽物だった。
ここまでは原作通り。
薄れた記憶を頼りにオレは歩く。
“彼”の代わりに物語を進めるために。
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