【ゆづちゃん】 ページ10
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これは、ゆづちゃんがアネモネ荘に住む少し前のお話。
***
日もまだ登らない朝方、たまたま目が覚めたウチは 別館の屋根の上に座っていた。
吐く息が白い。日中は暖かくとも夜はまだ寒い。
うちは首に巻かれた襟巻きに顔を埋めてみた。
フワフワ。暖かい。
「あれ?アネさんじゃありませんか?」
『?』
かけられた声。だが、左右を見ても姿は見つからない。
「上、ですよ」
クククッと可笑しそうに答えてくれた声。
言われた通り見上げてみると。
『!ゆづちゃんだ』
烏天狗のゆづちゃん。結ちゃんと仲良しで、良く遊びに来てくれる。
おはよー…………こんばんは?
しっくりくる挨拶が見つからず首をかしげていると、ゆづちゃんは またクククッと笑いながらウチの横に胡座をかいた。
「そろそろ おはよう、じゃないかな?」
『かな?』
ゆづちゃんがこんな時間にアネモネ荘へ来るなんて珍しいね。
「たまたま通りかかったらアネさんを見かけて
降りてきちゃいました」
迷惑、でした?
不安そうにこちらを伺ってくるものだから、ウチは思わず彼の頭に手を乗せた。
『そんなことないよー。ウチもたまたま目が覚めちゃってね』
ゆづちゃんとお話したいなー
言うと、ゆづちゃんは安心したかのようにふにゃりと笑った。
小さく よかった……と呟いていたのは無意識だろうか。
『最近の結ちゃん、良く笑うようになったね』
最初はピクリとも笑わなかったのに。
昔を思い出すかのように空を仰ぐ。
ゆづちゃんも釣られて空に顔を上げた。
空は薄ぼんやりと色がついてきた。夜明けが近いようだ。
「ええ、邪神を体に封じた
『直ぐに解いてあげられれば良かったんだけど、解くのはかけた本人にも難しいもんね』
呪いをかけるのは簡単なんだけどなー。
「少しずつ解けるようにしたんでしたっけ」
邪神とはいえ仮にも神の呪いをどうにか出来るなんて……
ウチはゆづちゃんの唇に指を置くことで言葉を制した。
『ウチは少しだけ促しただけ。殆どは結ちゃん自身の力だよ』
ほんと、凄いよね。結ちゃんは。
さすがウチの子!
「ウチの子って……結香は君よりだいぶ年上なんですよ?」
俺だってそうだ。
呆れ顔のゆづちゃんに、ウチは笑みを深めた。
『でも、此処にいる限りは大切な子どもなのですよ』
いつかキミも来てくれる気がする。
その時は、歓迎会をしなきゃ。
朝日を背にウチは笑う。
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ちゃっぴー(プロフ) - エスカルゴさん» 褒められた!素直に嬉しいです!ネタとリクエストはいつでも受け付けてます! (2019年8月7日 23時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
エスカルゴ(プロフ) - ネタ使ってくださってありがとうございます!!! めっちゃよかったです! (2019年8月7日 23時) (レス) id: d6c730a35c (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぴー(プロフ) - SNo catさん» ありがとうございます!大切にします!他にご要望とかありましたらいつでも仰ってください! (2019年8月4日 19時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
SNo cat(プロフ) - ちゃっぴーさん» 全然OKです!でも今の歪よりちょい言葉使いが荒くしてくださると助かります。 (2019年8月4日 18時) (レス) id: fcae8a0a34 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぴー(プロフ) - SNo catさん» 突然ですみません!歪様を風綺譚の話に出させて頂きたいのですがよろしいでしょう?時代的に難しそうなら諦めます… (2019年8月4日 16時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
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