【小説】季節は巡りても

季節は巡りても ページ39

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あの騒動から季節は巡り、今は秋。
鮮やかな紅葉がよく映える時期になった。
ウチが1番好きな季節。


当時、ウチは己の終わりを覚悟していた。
師匠との契約でウチの魂はもう転生は出来ないから、今後二度とみんなと会うことは無い。
文字通り“風(アネモネ)としての終わり”だ。
全てをかけてでも守りたかった。
覚悟していた、はずなのに
みんなの顔を見たら
『ああ、ウチは まだみんなと一緒に生きていいんだ』
って安堵したを覚えている。

因みにね。
イザナミちゃんとウチがいたあの空間は
ウチの術“夢渡り”の応用技の“夢縛り”って術で作った空間なんだ。
無意識だったからあの時は自分の術だって気づかなかったんだよね(笑。
制御も難しくて入ったらなかなか出られないんだ……あははー。

ウチがそうなっている間のアネモネ荘は大変だったみたい。
結ちゃんや毬子ちゃんが取り乱してて、ゆづちゃんや紫雲くんは結ちゃんを毬子ちゃんを歪ちゃんが宥めててくれて、
帰ってきたひなくん達もショックを受けてて

異変に気づいて師匠も来てくれたよ。
………疾風(はやて)を連れて。

師匠は、最初からウチを連れ戻す為に動いてくれていたみたい。

改めて、ウチ 愛されてるんだなって感じてみんなには悪いけど嬉しかった。えへへ。

みんなのおかげで無事アネモネ荘に戻ってこれたウチは今も変わらずここに居る。


変わったことと言えば、ウチが消えた場所に大きな桜の木(ソメイヨシノ)が生えたこと。
この木は清らかな気を纏ってて秋になった今も桜の花をつけている。
だからあの時 穢れを受け付けない疾風が降り立つことが出来たんだって。
あれ以来 彼とは会えてない。
でも、また会えるって信じてる。


最近知ったけど、この木の下で眠るとイザナミちゃんと会えるんだ。
その時はたくさん お話するよ。
今も紫雲くんや師匠、子ども達の心配をしてる。
良いお母さんだよね。
ウチも見習わなきゃ。


「アネモネー！」
良い甘味が手に入ったからお茶にしましょーよ！

遠くから、歪ちゃんの呼ぶ声が聞こえる。

『うん！食べたーい』
よいしょっとかけ声で立ち上がる。

目の前の桜がサワサワと風に揺れる。

夢のようなこの生活がいつまで続くかは分からない。

けど

「アネモネー？」

『今行くー！』

命が続く限り ウチはこのアネモネ荘を、家族みんなを守り続ける。






そう決めた。


＊

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