自覚 ページ6
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目を覚ますと、いつもの天井が目に入る。
『ねて、た……？「そりゃぐっすりとな」ぅひゃっ！』
一人だと思っていたから驚きに跳ね起き変な声が出た。
慌てて口を抑える。
「ようやくお目覚めか」
顔を横にずらすと父の顔が間近にあり、また驚いた。
「……」
『……』
お互いにそんなお喋りじゃないため自然な言葉が出てこない。
一時の沈黙が流れた。
それを断ち切ったのは
「どこか変なとこないか？」
父だ。
倒れたからか気遣うのだろうがこんな父は初めて見たため思わず、指さして『変』と答えると低い声で「おい」と怒られた。
父は深く息を吐くと
「オマエが倒れたのはおそらく術式の使いすぎによる呪力切れだな」
『じゅりょくぎれ……』
やっぱりか。
1人納得していると、探るような視線を父から感じた。
「アイツを治したそれは“反転術式”。
治癒の力だ」
なかなかにレアだぞ。
私は己の両の手平に目を落とす。
『お母さんを助けたいって思って……』
きっと、前の母はこれで亡くなってしまったのだろう。それほど深い傷だった。
一か八かの賭け。
治せて、よかったっ……
今になって自覚しジワジワと目元が熱くなってくるのを感じる。
私は堪えようと唇を噛んだ。
ふと、頭に何かが乗る。
「ガキが一丁前に泣くの我慢してどうする」
泣きたい時は泣け。
優しい声色。
見上げると、慈愛に満ちた目 表情。
滲み出る慈しみが私の感情を強く刺激する。
「アイツを助けてくれて ありがとな」
この言葉でついに決壊した涙腺からは
雨のように涙が溢れ落ちた。
手を伸ばすとぎこちなくて抱きしめてくれる大きな父の腕。
救えた！
救えたんだ！
私が恵の姉として早く生まれた時点でこの世界は違う道を歩んでいるのだろう。
今回 助けられても、2度目は無いとも言いきれない。
私は守りたい。
弟を、母を……父を。
そのために強くなる、から。
今だけは
不器用な優しさが滲むこの腕の中に少しだけ浸らせてほしい。
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