浮浪鬼 参【薄桜鬼 × 鬼滅の刃】

第 拾参 幕 ページ26

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月のよく見える京の夜で
俺とアンタは初めて出会った。

手渡す簪を大事そうに抱える仕草。

『見つけてくれてありがとうございます！』
嬉しそうなあの笑顔が、俺の頭から離れない。

一目惚れというやつだと、総司は言っていた。

頭を悩ませ買った桃の花の飾りがついた髪紐。
次に会えたら渡そう。

その時は意外にも早く訪れ、アンタは敵として俺に刃を向けていた。
見開かれ揺れる瞳が俺を射抜く。
愕然。困惑。そして、激昴。

何度も刃を交えた。

敵同士となり時が過ぎても、俺の気持ちはあの時から微塵も変わることはなかった。



事切れるアンタを腕の中に抱え閉じられた瞳に俺の涙が落ちる。
まるでアンタが泣いているような光景にまた涙が溢れた。

彼女に渡せなかったそれを握りしめ俺は誠の旗の元で戦った。






また、会いたい……


アンタに………Aに、会いたい……



次に会えたら今度こそ渡そう……








『こ、れ………』
彼の消えた場所で、手のひらに残った桃の花の飾りがついた髪紐。


───渡せたら、今度こそ伝えよう


愛している、と───



『ｯぅぅ………』

仄かに残る温もりを逃がすまいと抱きしめ蹲る。

『 はじめ……さん 』


名前を呼んでも、もう彼はいない。





会津の霧が晴れ、長い夜が明けた。


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