君と、恋の話がしたい。 (ページ48)

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「紫耀くんは偉い。偉いなあ。」

彼女にそう言われた時、
俺の中に大きく襲いかかっていた何かが。
今の今まで、何をしたって何を言われたって認めることができなかったそれが。
この小さな少女によって、見事に解放される。

「....よしよし。」

こんなに男らしくない事があるか。
だけど彼女があまりにも優しくも俺の背中を摩るから。
思わずその小さな身体に腕を回し返してしまう。
ダメだとわかっているのに。

「色んな事を考えてるんだね。
まだ高校生なのに。それだけで偉いよ。」

君はまだ中学生じゃないか。
それなの全てをわかったように。凛々しくて立派でそれが堪らなく愛おしくて。
そんなの、狡いじゃないか。

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「お父さんみたいになる必要なんてないよ」

その彼女の優しさに触れて、初めて気付いた。もう取り返しのつかないところまできていた。

「紫耀くんは紫耀くんらしいお医者さんになればいいじゃん。」

紫「....」

「私は紫耀くんのいい所沢山知ってるよ。私は紫耀くんの優しい所にいつも救われてるもん。
紫耀くんって凄いんだよ？」

紫「....ちょ、ごめんほんまにそういうのダメ」

「紫耀くんは凄い！紫耀くんカッコいいよ！」

紫「やめろって」

さっきまでボロボロ止まらなかった涙が嘘みたいだ。
甘やかされて褒められて、全く格好がつかなくて今度は恥ずかしくなって彼女の腕をギュッと掴んだ。
その拍子に俺の体と彼女の身体がもう一度近づく。

「........近い」

紫「....ごめん」

さっき俺を抱きしめた時はそんな顔してなかったじゃないか。
そんな、顔を赤らめたりしてなかったじゃないか。
そんな、まるで俺に恋でもしてるようなその表情はいくら制御しようにも無理だった。

キスをした。

ほんの一瞬触れるだけの。
どうしようもなく勝手な俺の衝動で。