君と、恋の話がしたい。 (ページ42)

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一度気になりだすと止まらなくなった。
そもそも友達はいるのだろうか、虐められてはいないだろうか。
制服を着て決められた時間に家を出る。
そんな当たり前を当たり前のように過ごす事ができているのだろうか。

名前は成瀬Aといった。
彼女の名前を呼ぶ事は結局一度もなかった。
この言葉にできないような感情が、今度は俺を苦しめた。
あの純白な少女が心配で心配で仕方がなかった。

そんな彼女との再会は、やっぱりあの場所であった。
季節はいつの間にか冬になっていた。
大きなこの病院の屋外で、夏に見た緑は随分と落ち着いた。
久しぶりにその場所で見つけた彼女は、首元に彼女らしいマフラーを巻いていて、唇は青ざめている。
いてもたってもいられずに、声をかけた。

紫「また会ったね」

「....紫耀くん？紫耀くんだ！」

彼女の声を久しぶりに聞けて、彼女の親にでもなったかのように彼女の事が愛おしくなって頭を撫でた。

紫「今日もここに用事があるの？」

病院に来る、という事は何かしらの事があったということだ。
きっと、退院後の様子を見るための通院であろうと思ったのだが彼女の口から発せられたのは違うことだった。

「うん。今日はね、足を怪我しちゃってね」

紫「どこに怪我をしてるの？」

「あっ、怪我じゃないか。
少しだけね、痛くって。」

彼女が他の人達と同じように運動をして、足を捻挫したとかそんな事だと思った。
またそれは、彼女が健康に生きている証であろうから不謹慎だけれど嬉しくもなった。

紫「そっか。お大事にね。」

「....紫耀くん、何だか大人になった？」

紫「へ？」

「夏に会った時はなんだかこう、
何かに悩んでるみたいだったから。」

そんな事が自分より年下の少女に見透かされているなんて驚いた。
医者になるという重荷。
それが悩みと呼べる悩みであるのか不明だけれど、紛れもなく彼女のお陰で少しふっきれたことがあったから今は深く考えずいた。

「何だか良かった。ずっと気になっていたから」

彼女がそう言った時、俺の胸がぎゅっと締め付けられるような感覚になった。
この時はまだ邪念だなんて思っていなかったさ。
ただ、純粋にこの小さな少女の虜になっただけ。