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高橋の目が俺を離してくれない。
その間、ひどく長く感じる。高橋が口を開いたのは俺の腕を掴んで数秒何かを考えた後だった。
海「....やっぱりいい」
廉「何なんそこまでいっといて気になるやろ」
海「第一人者は俺じゃない」
廉「は？」
海「とにかく俺がどうこう言える話じゃないから」
言いかけたのはおまえじゃないか。
彼女の事を話そうとしたのは高橋本人だ。
別にそれを強要したわけでもなく。
ただ、そこまで隠されると強要だってしたくなる。
廉「おい、はけ」
海「ちょい離して」
廉「初めに腕掴んだのはおまえやろ。
話すまで離さんから。フリやない。」
子供みたいなやり方だというのもわかっている。
でもそんなダサいやり方でもなんでも良かった。
彼女の事が知りたい。
話す事ができないような秘密なら尚更。
海「ねえ、永瀬は馬鹿なの」
廉「何が」
海「第一人者が俺じゃなかったら残りは1人しか思いつかないはずでしょ」
思考を凝らすこともなくすぐに浮かんでくる奴がいた。
廉「平野か」
海「そこまで言ったんだから離して」
ムカつく、何もかもに。
何故かわからないけれど平野という名前が出てくるだけで猛烈に苛ついてくる。
間違いなくその腹いせといっていいだろう。
俺は高橋の腕を思い切り掴み直した。
廉「おまえは成瀬の何なん」
海「なんだよ面倒くさいな。
友達だよ。ただの友達。」
廉「そうは見えないから聞いたんやけど」
海「....はぁ。永瀬って馬鹿っぽいなっていつも思ってたけど本当にただの馬鹿なんだね。」
思わず手が出そうになる。
平野といい、高橋といい、少し頭がいいからってただの凡人の俺を見下しているようなそんな発言に一々腹が立つ。
海「もし俺が成瀬さんの事が好きだったとして、
それはどうなるの？」
廉「めちゃくちゃムカついて、多分ぶっ壊しにかかる」
俺がそう言うと高橋は急に笑い出す。
面白かったわけでもなくただただ呆れた様子で。
海「ねえ、矛先が違うでしょ。
俺は本当に何でもないから。ほら、はやく離せって」
高橋が俺の手を振りほどく。
言葉の意味を考えた。俺のこの理由もない苛立ちの矛先はどこに向ければ正解なんだ。
いいや、理由ならある。彼女のことが好きだから。
平野がめちゃくちゃ頭が良くてめちゃくちゃもててその上医者の息子だとしてどうしても負けたくない程に。
いよいよはまってしまったなと思う。
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作者名：ふる
| 作者ホームページ：http://twitter.com/ei_njo
作成日時：2017年10月7日 15時
