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紫「何、昨日の今日でどうしたの」
海「どうしたらいいですか」
紫「せやから何?」
海「俺は別に高校生活に何の期待も抱いてなかったし、なるべくめんどくさい事に関わりたくなかったんです。けど...」
高橋海人。
めちゃくちゃ勉強ができて新入生テストの掲示板に名前が載っていたのを何故か覚えている。
彼女と同じクラスだったから目についたのだろう。
彼女の口から偶にその名前があがることもあった。
俺が一緒に帰れなかった日の放課後、帰り道に其奴に「助けてもらった」と言っていた。悔しかった。
海「けど...知ってしまった以上その事を意識しないで生活するなんてできないんです。本当に自分でもおかしいって思うんですけど、けど何もしないのは嫌なんです。力になりたい。」
悔しかったから意地悪をしようとか別にそういうわけではない。
俺より身近に寄り添ってやれる相手が現れたならそれでいいじゃないか。そうやっていつだって思っていたはずなのにタチの悪い邪念のせいで素直にうんと頷くこともできないだけで。
紫「それってAの事が好きだから?」
海「....多分それは違います。」
紫「じゃあどうして?」
海「...俺と凄く似てるから」
この世界はあらゆる奴等の下劣や邪心でできているのにそんな正義が存在するものか。
そんな媚びを売ったような無駄な正義が一番迷惑だ。
それならやっぱりAには俺との世界だけがあればいい、とそう思ってしまう。
海「いつもにこにこしてるけど本当は凄く繊細だし、それに傷つきやすくて強がりで。全部凄く自分と重なるんです。」
紫「悪いけどさ。一緒にされたら困るんだ。
君の小さな悩みと彼女の抱える大きな事。」
海「...そうですよね。それはそうです。」
流石頭がいいだけはあって、物分かりがいい。
わかったなら、もうこの話は終わりにしよう。
海「...けど、ならどうして昨日、俺にあそこまで言ったんですか。」
つくづく頭がいいから核心を突かれると焦る。
動揺がばれないように、自分の足を動かす。
けれど無駄であった。高橋くんが俺の腕を思いきり掴んで離してくれない。
海「わからないんです。わからないなりに一晩考えましたけどやっぱりわかりませんでした。だから聞きに来たんです。」
今すぐに彼女を手放したいからだよ。
誰かにその責任を押し付けて、手放して、全部なかった事にしてしまいたいから。
嫌いになりたいから。だからだよ。
そんなこと不可能だってわかっているのに。
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作者名:ふる | 作者ホームページ:http://twitter.com/ei_njo
作成日時:2017年10月7日 15時