君と、恋の話がしたい。 (ページ9)

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「永瀬くん」

朝、いつになく目が早く覚め早く学校へ行く。するとどうだ。神様の悪戯か何かか教室には成瀬がいた。
あんなことしておいて案外、普通に声をかけてくるんだなあと不服に思ったけれど彼女の顔を見ると不思議にそれはすぐになくなった。

「おはよ」

廉「....おはよう」

「昨日、バイバイって言えなくてごめんね」

一応、あの悪戯に悪気はあるらしいと彼女を見てわかった。

廉「全然。つーかなんかごめんな。」

どんな言葉が正解かはよくわからなかった。
だから、なんかごめん。
だけど本当にそんな感じだったから。

「何で永瀬くんが謝るの？
永瀬くんの事教卓の下に置きっぱなしにしちゃったの私！」

ん、置きっぱなし？合ってる？と首をかしげる彼女を見れば本当に昨日の不可解な行動に深い意味はないんだなあと悟った。

廉「いや、全然平気やから。うん。本当に」

「ふふ」

廉「.....？」

「いやぁ、関西弁だなあって。」

彼女にとって関西弁がそんなにおかしなことだったのか、彼女は無邪気に笑う。
彼女に対して緊張感は勿論あるけど
少し前までの頃とはまるで違った。
思っていたより彼女が俺を受け入れてくれているような気がしているから。

廉「関西弁、好きなん？」

「うん。好きだよ。なんか落ち着く」

その、好きだよの部分を切り取って何度も脳内で再生した。
たまらなかった。

「紫耀くんも関西弁だからかなあ」

この子は本当に何事も悪気なくしているものだから困る。
彼女に聞きたい事は沢山あった。
平野先輩と付き合っているのか。
そうだとすれば高橋とはどんな関係なのか。
将又、俺に対してはどんな感情を抱いているのか。

だけど聞けなかった。

こんなに急に近くになるとダメだ。
以前は随分遠くから見ていたものだから。
彼女との距離感の掴み方も彼女が考えている事も何一つわからなかった。

あんなに彼女を勝手に観察していたはずなのに、そういえば彼女の事を何一つとしてわかろうとはしていなかった。
彼女の事を特別視していたが為、彼女を神聖化しすぎていた。
理解したくない事を都合の良いように解釈していたこともあるのだろう。
だからすこし怖い。
現実の彼女と向き合う事に。
きっと、理想も現実も彼女に魅力がある事に変わりはないのだろうけど。