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彼女と向き合うにあたって、彼女に俺の気持ちは隠す事にした。
上手く隠せているかはわからないし、
もしかしたら気付かれているかもしれないけれど。
言葉にするのはいけないと思った。
彼女を困らせてしまうのが目に見えているから。
好きだという感情は彼女にとったら迷惑だ。
彼女には彼女が向き合うべき問題があるのだから。
俺の自分勝手な気持ちの押し付けは禁止だ。
俺と彼女は連絡先を交換した。
彼女は変わらず俺の事を紫耀くんと呼び、
俺は彼女をAと呼ぶようになった。
病院で彼女の母親と会った事がある。
『迷惑をかけているようで』と彼女のお母さんはそういったけれど迷惑だなんて思った事は一度だってなかった。
寧ろ、やっと自分の存在意義をみつけたようなそんな感覚が嬉しかった。
彼女は前よりも頻繁に病院に訪れるようになった。
見かけには何一つ変わりはないように思われたけど、きっとそれ程に通院が必要なのだと思う。
「JKになりたい」
彼女はそう俺に言った事があった。
JKというのは女子高生の事であるけれど、彼女にとったらその言葉は華々しく、神々しいものなんだと思った。
なんて可愛らしい願い事なんだ。もっと欲張りに生きたらいいのにと思ったけれど、きっと彼女にとったら特別なんて必要なくて、当たり前を当たり前にできる事こそが幸せに感じる瞬間であるのだろうと彼女の横顔を見て悟った。
それが、俺が高2の夏の事だった。
父親に聞いた。
あとどれくらい生きられるのかと。
一度だけではなく、それは頻繁に。
けれどきまって『わからない』と言われるだけであった。
どうしても彼女の願いを叶えてあげたかった。
JKになりたいというのが彼女が望む事が生きる希望になるのなら、そうさせてあげたいと思った。
彼女に、俺の高校へ進学しないかと提案した。
彼女はとても利口であったし、無理な話ではない気がした。
「どうしてそこまでしてくれるの?」
彼女は嬉しそうにけれど眉をへの字にして俺に訊いた。
君の事が好きだから。
そう言いたかった。
紫「Aは俺の妹みたいなものだから」
俺はそう答えたと思う。
最後までこの気持ちは隠し通すと決めていたから。
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作者名:ふる | 作者ホームページ:http://twitter.com/ei_njo
作成日時:2017年10月7日 15時