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「高橋くんと話してみたかったんだぁ」
彼女とこうして隣を歩く事になったのはその場の完全なる成り行きで、あのまま同じ駅に向かう筈なのにわざわざ離れて歩くなんて馬鹿らしいから仕方がない。
海「どうして?」
「高橋くん頭がいいから。色々教えて欲しいことがあってね。」
彼女は普段あまり誰かと話している印象が強くなかったけど、なんだ意外とこんなもんなのかと思う。
近寄り難いというのはイメージだけの偏見だ。
海「教えて欲しいことって何」
俺も何だからしくない。
彼女に寄り添って歩いていると変に気を使ってしまう。彼女の歩幅が俺の半分だから俺はスピードを合わせて彼女の隣をキープする。こんなのやっぱり変だ。
「大学受験の事ってもう考えてる?」
海「....まだよくわかんないな。」
「....そっか。そうだよねえ。」
あからさまに落ちた表情の彼女を横目に見て何故か焦った。彼女の質問の答えに答えられないからといって何が起こるわけでもないのに。
海「成瀬さんは、考えてんの」
だけどだからといって、やっぱりその話を俺のターンに回して欲しくはなかった。俺の未来の話はもう散々だ。
「私っていうかね、友達が今年受験で。」
海「うん?それで何が聞きたかったの」
「どのくらい勉強したら、受かるのかなって。」
彼女が取り出したスマホから指先で器用にそのページを開く。俺は前のめりになってその画面をのぞいた。そして唖然とした。
海「....ここはね、相当やらなきゃ入れないね」
「....やっぱりそうだよね?」
超名門の医療系の学校。
入るのが難関が故に将来は約束される、といったら正しいか。
はたして、彼女がどうしてそんな困った顔をするのかわからなかった。
「頭がいい高橋くんがそういうんだもんなぁ」
海「俺、別に頭良くない」
「何それ嫌味?性格悪い!」
そうだよ、俺めちゃくちゃ性格悪いのに。
なのになんでこの子とまともに取り合ったりしてるんだ?
その上、変な気だって使っている。
「ウソウソ、冗談。高橋くんは優しい。」
その謎は彼女の笑った顔を見てすぐに解ける。
ああ、俺はこの子のペースにまんまと乗せられてるんだと。
嫌じゃなかった。
寧ろ、楽しかったというんだからやっぱりあの日の俺はおかしかったんだと思う。
好きだ、とかそんな感情は生憎持ち合わせていなかったけれど彼女に興味がないといったらそれはもう嘘になるだろう。
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作者名:ふる | 作者ホームページ:http://twitter.com/ei_njo
作成日時:2017年10月7日 15時