206 ページ8
.
馬鹿みたいだと思う。
何事にも白黒つけたがるこの世の中が。
例えば今こうやって、赤の他人の相沢が声を荒げてAを非難すること自体おかしなことやと思う。
夏「永瀬くん、優しすぎるんよ」
廉「...」
夏「永瀬くんは...優しい」
Aへの文句を言い放った後、暫くして相沢が俺の頬に手を添えてそう言っている。
ずっとそう言い続けていた。
一人暮らしの女の部屋にいる。
何故かといえば、簡単なことで。
相沢に借りた参考書を返しに来た。
ある程度の下心を持ち合わせてきたつもりで。
A以外の女の部屋にいることが俺にとったら凄いことで以前までは考えられないことでもあった。
しかし俺の身体は案外すんなりとそれを受け入れいたし、相沢をベットに押し倒して横になるのだって難しいことでもなかった。
ただ、その先はどうしてもダメだった。
どうしてもダメで相沢にごめんと謝るばかり。
相沢に触れようとしてもその手がなかなか伸びない。Aと別れている今となっては別にこれは浮気でも裏切りでも何でもないのに。
夏「永瀬くん、少しもAさんのこと傷つける気ないんやもん」
廉「...」
夏「それどころか、Aさんのこと許そうとしてる」
相沢に言われたそれは図星だった。
Aのこと、自分勝手に縛り付けていたのは俺だったから。
Aは優しいから、俺の身勝手な願望に応えるように東京に来てくれたし、俺と向き合おうとしてくれていた。それが無理やりだとしても俺にとっては嬉しかった。
廉「...あたりまえやろ」
夏「永瀬くんは、可哀想。」
本当に優しい子。
だからこそ、俺に本当のこと話してくれた。
自分の口で、言葉で。
許すに決まってる。
いくらビッチなクソ女だったとしても、あんなに愛くるしい生き物が俺の所有物だったという事実も消えない。
夏「...でも、Aさんは」
廉「ショウのやろ、わかってる」
もう、痛いほどわかっている。
Aが選ぶのは俺じゃないってことくらい。
それでも、好きだ。大好きだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2646人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Sasa(プロフ) - 大好きな作品です…更新待ってます（ ; ; ） (2022年10月29日 12時) (
レス) @page12 id: d5f0acd946 (このIDを非表示/違反報告)
miiika(プロフ) - 夢中になって時間を忘れてました！大好きな作品です！！更新楽しみにまってます！ (2020年5月31日 18時) (レス) id: bda362bf51 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 更新うれしいです(涙) (2020年5月8日 22時) (レス) id: 0ce10784e5 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - 今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなにはまったお話本当に久しぶりです(T-T)ふるさんにしかない表現や世界観に引き込まれていきます！！完結楽しみにしています！これからもゆっくりふるさんのペースで頑張ってください！ (2020年4月24日 1時) (レス) id: fa4e2366ed (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - お帰りなさい。たまに読み返してみたりしていたので、更新嬉しいです。 (2020年4月21日 16時) (レス) id: 0d7011afb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふる
| 作者ホームページ：http://twitter.com/ei_njo
作成日時：2017年9月25日 18時
