7話 ページ9
――だから、冒険者協会というようやく手に入れた最高の職場を失うわけにはいかないのだ。
そうだ。
後で、クビにしない由の言質を冒険者協会のキャサリンからもらえばいい。
なるべく穏便に済む方法はないだろうか…。
企みを画策する中で、コンコンという心地いいリズムが扉から鳴る。
私は考えを中断して、金髪の彼女を笑顔で出迎えた。
代理団長から私の体の症状について聞かされる。
私が倒れたのはやはり過労が原因だったらしい。
…まぁ、スメールからモンドまでの長い旅路だったのに、仮眠はほぼなく、ろくに飲み食いもしてなかったから当然の話だろう。
「君に聞いておきたいことがあるんだが。」
躊躇いがちにジンは口を開いた。
―念の為にと、シスターが治癒の魔法を施したんだが、なぜか効かなかったらしい。
「身に覚えはあるだろうか?」
『――?』
以前彼女と同じような質問をした青年を思い出す。
でも、その問いに私は、以前と同じような返答しかできないのだ。
「ごめんなさい。私もよくわらないんです。」
一晩泊めてくれたことに感謝し、私は騎士団のもとから離れることにした。
起き上がった際にふらついた体を見て「体調がまだ優れないのであれば、今すぐ教会に連絡を…」と言って心配するジンを慌てて止めて私は騎士団本部をあとにする。
しかし、騎士団本部の外まで見送ってくれた彼女が別れ際に「君は、ディルックという男を知っているか?」だなんて文脈のない質問をされた。
スメールにそんな名前の人いたっけ?と考えるが、聞いたこともない名前なので「誰ですか?」と聞けば「いや、何でもない。」と言って話は終わった。
…誰だろう?と思ったが、私の頭はすぐに忘れる。
それよりも優先しなければならないことがある。
騎士団から離れた私がまず向かったのは、もちろん冒険者協会だ。――とはいっても受け付けの方だが。
「その言葉は本当?」
「はい、本当です。」
じぃっと見つめるが、受付嬢のキャサリンはまっすぐに見つめ返すと、にこやかに見つめ返してくれた。
「冒険者協会は常に人手不足ですし、今回の件でAさんに辞めてもらう理由は一切ありません。
実際貴方が入会してくださり本当に助かっています。Aさんの仕事ぶりは依頼者からとても好評で、感謝の言葉とぜひまた頼みたいという声をたくさん頂いてますから。」
嬉々とした声色で冒険者協会のキャサリンは答えるが、「ですが―」と眉を潜めながら続けた。
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沙稀乃(プロフ) - Dorothyさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございます!!とっっても嬉しいです!!また、ネタが降りてきたら、第二部みたいなのを一気出しをしますので、その時はよろしくお願いします!!(*^^*) (11月26日 12時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
Dorothy(プロフ) - 推し×ヤンデレ大変誠にありがとうございます、毎秒更新楽しみにしております最高 (11月25日 21時) (レス) @page26 id: 7168971a27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙稀乃 | 作成日時:2023年11月24日 17時