知らなくてもいい話12 ページ38
彼女を甘やかして優しくしたいはずなのに、腹の奥底で滾っていた彼女への暴力的な「愛」が込み上げてくる。
僕から逃げることだけは、どうしても看過できない。
許してやれない。
反抗するようならば、少し仕置きをしなければと考えてたーーが、目の前の彼女は僕の腹の中を知らないのか、逃げようともせずに僕の問いかけに懸命に応えようとしてくれていた。
僕のことを考えてくれている。
彼女は、今僕を見ている。
――嬉しい。
僕の中の怒りは消えていく。
つくづく僕は酷い男だ。好きな女が困る姿を見て、仄暗い喜びを確かに感じているのだから。
…僕の頭は壊れているのか?いや、壊れていたな。とっくに。
少しの間彼女の出方を伺うも、結局彼女の答えは返ってこなかった。―否、答えは聞かずともわかりきっている。
彼女は心配させる真似はよくしていたけれど、一度たりとも僕を裏切ることはない。
彼女の行動はいつだって僕を思ってくれていた。
…逃げようとしたことだって、きっと僕ですら知りえない深い理由があるのだと、自分に言い聞かせる。
でなければ、彼女が僕の手を拒絶しないことや、今こうして困っていることに説明がつかない。
でも君にどんな理由があろうとも、僕は離れたくないし手を放したくない。
君は僕といるべきだ。
君が独りで色々と思い悩んだ末の最善の一手が「僕から離れること」だとするなら、
僕だけを見つめて、僕に溺れさせて、依存させて、僕なしでは生きられない身体にすれば、その考えも改めてくれるだろう。
そう、…「僕を頼ること」が彼女の中で最善であると脳内を書き換えてあげられる。
そのために、――いっそのこと君を囲うか……?
ああ、それがいい。
なんで今まで思いつかなかったんだろう。
彼女を閉じ込めてしまえばいいんだ。
そうすれば邪魔者が僕らを分かつことはまずないし、ずっと二人きりだ。
仕事は忙しいけれど、君のためならいくらでも時間を作るよ。不自由な思いはさせないし、時折気分転換のために一緒に外出するのもいい。
たくさん甘やかしてたくさん優しくする。寂しい思いなんてさせない。
君は無理して何かを成しえなくてもいいんだ。
君といる時間こそ何よりも幸せなんだから。
しかし、実行に移すのはまだ早い。
もう少し君が心を許してからでないと、君は自力で抜け出そうとするだろう。
「……少し、場所を変えようか。」
焦りを抑えるように、半ば強引に指を絡めて僕は彼女の手を引いた。
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沙稀乃(プロフ) - Dorothyさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございます!!とっっても嬉しいです!!また、ネタが降りてきたら、第二部みたいなのを一気出しをしますので、その時はよろしくお願いします!!(*^^*) (11月26日 12時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
Dorothy(プロフ) - 推し×ヤンデレ大変誠にありがとうございます、毎秒更新楽しみにしております最高 (11月25日 21時) (レス) @page26 id: 7168971a27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙稀乃 | 作成日時:2023年11月24日 17時