2話 ページ4
「はぁ〜…。」
護衛が終わったところで、どっと肩の荷が下りる。
夜に差しかかったところでモンド城になんとか辿り着いた。馬車の器具が壊れそうだったのにも関わらず、それでも直さずに無理して使い続けた結果、当然馬車は壊れるし、修理に余計時間がかかったし、到着時刻も随分遅れた。そのせいで商人の機嫌ももっと悪くなった。
あまつさえ馬車が壊れたのは私が原因だと言う始末である。
「有難く思うんだな。」
本来の報酬よりも軽くなった麻袋を渡され、げんなりした。
随分と軽い麻袋を投げつけたくなる衝動にかられながらも、…運が悪かったのだと割り切る。
「女」であることや、「気味の悪い容姿」のせいで物心ついた頃から差別はよくされていたのだ。あんな奴、気にするだけ無駄だ。
息を吸って心を落ち着かせる。
それよりも、今日の宿を探そう。
なんていったってモンド城内は広いのだ。きっと一部屋ぐらいすぐに見つかる。
――そう意気込んでから、一体どれくらい経過したのだろう。
「そ、その…ごめんなさい。今日はどの部屋も満室なの。」
最後の希望を持って訪れた宿の人にもそう残酷な言葉を突きつけられた。
お金はあるのに、まさかこんな巫山戯た現実があるのか…??
運のなさに熱いものが込み上げてくる胸をおさえ宿を出る。
最近はクソ商人のせいで夜通し眠れずにいたために、少しでも気を抜くと意識を失いそうなのだ。
いい加減眠らないとまずい。しかし、ここはもう野宿しか道がないように思えてきた。
できることなら、ベッドで熟睡したかった…。
行く宛もないのでとぼとぼと石畳の地面を歩いているとふいに誰かから声をかけられた。
「こんばんは、おねーさん。」
「え、…あ」
足を止めて顔を上げれば、そこには浅葱色の服を身にまとう可愛らしい格好の少年がいた。すっかり日は沈んでいるが、道沿いに置かれた街灯や家の明かりでそのシルエットを捉えることができる。
「少しふらついてるようだけど、大丈夫?手をかしてあげるよ。」
「ええと、…平気、です。大丈夫。」
手を伸ばそうとした彼に慌てて、首を振った。
少年に心配されるほどやわじゃない。
「ほんとうに?」
「え…」
少年は更に私に近づいて私の顔に手を伸ばす。
その声や仕草はほんとうに心配して私に尋ねているのがわかる。
なんていい子なんだ…!!
モンドに来て初めて自信を気にかけてくれる言葉に胸が熱くなっていた。
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沙稀乃(プロフ) - Dorothyさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございます!!とっっても嬉しいです!!また、ネタが降りてきたら、第二部みたいなのを一気出しをしますので、その時はよろしくお願いします!!(*^^*) (11月26日 12時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
Dorothy(プロフ) - 推し×ヤンデレ大変誠にありがとうございます、毎秒更新楽しみにしております最高 (11月25日 21時) (レス) @page26 id: 7168971a27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙稀乃 | 作成日時:2023年11月24日 17時