知らなくてもいい話4 ページ30
問題なのは、彼女が他の誰かと結婚でもすれば、僕は迷わず彼女の愛する人を斬り殺してしまいそうだということ。
それは良くない。
武力行使なんてしてしまえば、彼女は当然僕を敵対視することだろう。
…となれば、彼女が僕を好意を抱くどころか未来永劫関わることすら叶わなくなる。
彼女に拒絶なんてされたくないし、嫌いだとも言われたくないのだ。
しかし、彼女と離別してしまう緊迫した状況に差し迫られたとき、…それすらも踏み越えて自分は残酷なこともできるのだろう。
そんな気がする。
恋愛を一種の病だと表現する詩人の歌を聞くことがあったが、今なら頷ける。
まさに今の自分は難病にかかったようだった。
胸が焼けるように苦しいのに、何をしても満たされず、渇望する。
いっそのこと忘れようと努力しても、染み付いて離れない。
ーー選択肢なんてあるようで始めからないものだった。
…あの子に会おう。
僕のことを忘れていても、嫌っていてもいい。
出会う形が屍だとしても構わない。
渇きと飢えに駆られるように、あの子を探す。
しかし、あの子と別れた後に加入した「地下情報網」の力を借りてみても、うまくいかなかった。
生存確認はできても、その足取りがつかめないという結果だ。
それだけでも十分な収穫だろうと思う反面、あと少しで届かない距離に歯痒さを覚える。
…まさか僕から逃げているのか？
頭によぎる不安に僕はすぐ首を振った。
考えすぎだ。
彼女はたぶん執行官と遭遇したあの一件のせいで、日向を避けているだけだ。
あの頃の情景を思い出し、歯を食いしばる。
僕を抱えあげようとする彼女の震える手を止めて、「逃げろ」と声を搾り出した。
降り出した雨の中、あの子はそんな状態の僕を見て泣いていた。
仮面越しでもわかった。
泣かないで。
君に泣かれると僕はどうしたらいいのかわからなくなる。
声がでない。
ああ、それでも、…その無機質なその仮面を取って、涙を優しく拭ってやりたいと思った。
腹部の出血が酷いせいか、手を伸ばそうにも腕は動いてくれない。視界もぼやけていった。
なんて情けない話なんだろう。僕はあのときあの場所に居合わせていたのに、肝心なところでまた何もできなかったんだ。
…もうあんなヘマはしない。
そのためにも今やれることを鍛えなくてはー、その決意に呼応するように、大剣を振るう手に力がこもった。
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沙稀乃(プロフ) - Dorothyさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございます！！とっっても嬉しいです！！また、ネタが降りてきたら、第二部みたいなのを一気出しをしますので、その時はよろしくお願いします！！(*^^*) (11月26日 12時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
Dorothy(プロフ) - 推し×ヤンデレ大変誠にありがとうございます、毎秒更新楽しみにしております最高 (11月25日 21時) (レス) @page26 id: 7168971a27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2023年11月24日 17時
