【募集企画】東方幻想記録物語11巻 (ページ16)

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Another side　大湊翼ページ16

―――幻想郷と外の世界が地獄絵図になっているのと同時刻―――

「おいセラ、外が凄い事になってるぞ。何もしなくて良いのかよ」

ボクこと大湊翼は、のんびり紅茶を啜っているセラことエインセル―――名義上はボクの従者だが、従者という肩書きほどセラに似合わないものはないだろう―――に話しかけた。ここがどこかと言うと、幻想郷の中でもかなり辺境地にある、ボクとセラが一緒に住んでいる家だ。標準的な広さの平屋建て木造住宅で、ボク達は縁側に座って幻想郷の中心部を遠目に眺めている。

「逆に聞くけどね、マイロード。私のようなか弱く幼気な少女と、キミのようなか弱く貧弱な青年があそこに飛び込んだところで、ぷちっと殺されるのが関の山じゃないか？」

「嘘つけ！指パッチン一回で宇宙一個消し飛ばせる奴が何言ってんだよ、ばか！」

さらさらの綺麗な銀髪を揺らしながら、セラはくすくすと笑う。ボクは不服な感情を表現するように、外の景色へと目を向けた。幻想郷の中心部はまさに地獄絵図だ。逃げ回る人々の悲鳴と燃え盛る炎の轟音が、耐え難い多重奏を奏でている。

「―――でも本当に、呆気ないものだな。何百年守られてきた街並みでも、こんな短い時間で全部なくなってしまう」

「おや、我が主人は詩人デビューかい？どうせならもっと風流な景色を詠んで詩を書けばいいのに」

「うるせー！ボクにだって格好つけたい時もあるんだよ！セラのばか！」

「はいはい、私が悪うございました。お許し下さいご主人様。……いやね、でも本当にこれは私が介入すべき事じゃないんだよ。いつだってそうだろう？私達がやるべき仕事は、そういう事ではないんだから」

「―――って言うのは嘘で、本音は単に面倒臭いのともっと興味を惹かれている事があるからだろ」

「あ、やっぱりバレたかい？」

セラはくすくすと笑い、なぜかボクをじっと見つめた。宝石を例えに使っても表現出来ないほど透き通った、鮮やかな赤い瞳がボクの視線を捉えて離さない。……セラが意味もなく人の顔を凝視するのは度々ある事だ。こういう時は基本的にボクをおちょくろうとしている。現にセラに見つめられたボクの心拍数は上がっていくばかりである。セラと出会って三年、一〇〇回以上同じ事をされているが、未だにこれには慣れない。
こいつ、顔だけは本当に良いんだから……。

「一〇〇回は同じ事をしているのに反応が変わらないとは、私の主人は随分と純粋だねぇ」

「うるさい、ばかっ！ほらオマエ、なんだっけ……『大決闘祭』？の準備を頼まれてるんだろ！？さっさとやれよばかぁ！」