万葉の話 ページ28
彼は拙者の親友であった
ある日彼は拙者に、「無想の一太刀」を聞いたことがあるかと聞いてきた
拙者は当然、その一太刀は「神罰」が下る時にのみ見られると答えた
それは雷電将軍が達した武の極み
最強である証
しかし彼は、「その一太刀、手が届かなくもない」
「いつの日か雷帝に相対する者がこの地上に現れる」と言った
その後、「目狩り令」がなんの前触れもなく下された
人々の願望は、「永遠」を構築する瓦と成り果てた
そして、拙者が放浪をしていた時
彼が「目狩り令」の執行者に、「御前試合」を申し込んだと聞いた
「御前試合」は厳粛で残酷なもの
敗者は神罰を受け、勝者は転機を勝ち取る
彼は自分こそが立ち上がるべき人間だと思ったのであろう
それに、「無想の一太刀」に相対するのが、彼の願いでもあった
しかし拙者が「天守閣」に着いた頃、すでに御前試合は終わっていた
ただ「神罰」が下り、彼の刀が地面へと落ちる音が響いた
それが彼が見たかった光であったのだろう
最後の瞬間、彼はどのような顔をしていたのであろうか
想像する間もなかったでござる
拙者は光が失せゆく神の目を奪いそこから逃げた
拙者に理解できたのは
彼の熱き願いを、氷のように冷たき神像へはめ込むべきではないということのみ
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作者名:ゆっきーぷ | 作成日時:2022年9月14日 21時