☆連隊戦の訪れ 壱 《こんのすけ》 ページ4
本丸に夏が訪れた。茹だる様な暑さ____世間では猛暑と呼ばれるソレを何故、態々この空間に再現しようとしてくれたのかは不明だが、大きなお世話に尽きる。
普段以上に顔に厳しさが浮かぶのも致し方ないというもので、遠征帰りの御手杵に「 あんた、機嫌悪いのか？なんかあったか？ 」と心配されるのも致し方ない。
純朴な彼にむすっとした顔を向けてしまうのも申し訳ない所だが、正直言ってこの現状はなりふり構ってなぞ居られない。
腐っても人間である自分にとっても、人間の身体を与えられた付喪神にとっても由々しき事態である。
特に後者に関しては、今年が初めての夏になる者も居る。
彼等には特に水分補給を怠らぬ様念押しはしているが、果たして聞いているか怪しいものだ。
そんな様子でそわそわ、ふらふらしながら本丸を巡回していると、唐突。
前方から毛玉の塊がポンと弾ける様に現れる。
この光景はもうすっかり日常茶飯事である。
「 …管狐、あまりくっつかないで頂きたい。ただでさえ熱は過剰供給だ。 」
此方に擦り寄ってくる管狐に文句の一つを言いながら屈んで視線を合わせれば、管狐の方は相変わらずの調子で「 主さまは相変わらず私めのことをこんのすけと呼んではくださいませんね。 」なんて返してくる。
結局何が言いたいんだという視線をじとり向けたところで漸く要件を思い出した様に、擦り寄っていた身をすっと退かせて背を正した管狐、改めこんのすけは、「政府からの伝令です。 」と、此方をくりりとした黒真珠の瞳で見据えてきた。
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作者名：乱数 | 作成日時：2019年8月14日 2時
