☆連隊戦と反省会 肆 《蜻蛉切/日本号》 ページ24
面食らった様子の蜻蛉切に対して、日本号は至って平然としたまま、普段と何の変わりもない本紫の眼を瞬かせる。
事の真偽を確かめるように小さな声で「…そう、なのですか。」と口にする蜻蛉切に対して、嘘を吐く道理もない。
私は黙って首を縦に振った。
「ま、そうだろうなあ。
御手杵が修行に出た頃合いから、あんた随分と熱が入ってた様子だった。
俺でも分かるくらいなんだ、余程鈍くなけりゃあ勘付いているだろうよ。」
尤も、気付いてねぇ奴さんもいたがなあ。
揶揄うように笑う日本号に対して薄く顔を赤くしながらも「そ、その話は今関係ないだろう…。」と今し方と何ら変わりのない言葉を口にしつつふいとそっぽに顔を向ける蜻蛉切。
先の緊張は一転して、場には和やかな空気が流れつつあった。
「…隠していたことは謝るよ。
事情を話していれば、君たちがこうして態々部屋に来ることも無かっただろうから。
すまなかったね。」
すらりと出てきた謝罪の言葉、けれどそれを聞いて二人の表情が満足の色を見せることはなく、どちらかというと先の博多のような呆れ顔へと変わったのに首を傾げた。
何か間違えたのか。
知らず識らずの内に頓珍漢な事を言っている程怖いものはない。
どうかしたのか、という声を掛けるより前に、日本号が胡座を組み直しながら溜息を吐いた。
「ったく、飼い犬は飼い主に似るって言うが…此処の刀は主人に似ちまった事に間違いはねぇなあ。」
どういう事かは知らないが、遠回しに的外れなことを言っているぞ、と伝えられたのは良く分かった。
蜻蛉切の方も何とも言えない顔をして頰を掻いている。
「主、我々はこの場において、謝罪を求める立場にはないのです。
そして事情がはっきりした今、尚分かります。
主も謝罪をするような立場ではないと。
だからこそ、我々に向かってすまなかった、などと言われても仕方がないのです。」
包み込むような低音は優しく私を諭した。
成る程、そういう事かとすとんと納得したわけではないが、兎に角彼らは謝って欲しくないのだろう。
それに対してまた謝罪の言葉が出そうになるのを視線で咎められ、すんでの所で引っ込める。
「…我々も、要らぬ謝罪をしにきたようだな。」
「なあに言ってんだ、元から謝りに行きてぇって言ってたのはあんただけだろ。」
軽口を叩いてくつくつと喉を鳴らす日本号の姿と、相変わらず揶揄いにも真剣に反論する蜻蛉切の姿。
日常の色が戻りつつある部屋は、優しく三人を見守っていた。
☆連隊戦と反省会 〆 《博多藤四郎》→←☆連隊戦と反省会 参 《蜻蛉切/日本号》
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作者名:乱数 | 作成日時:2019年8月14日 2時