【短編集】何の変哲もない本丸のありふれた小噺 (ページ13)

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☆夏の昼のかたり　壱　《石切丸/太郎太刀/次郎太刀》ページ13

※石切丸視点

「これで良し、と。」

遠征から戻ってきて本丸の門を閉じた頃合いは、もうすっかり夜も更けた刻。
同じ部隊で出陣していた太郎太刀と次郎太刀を先に返した後一人で施錠を終え、息を吐く。

今日の遠征先は安土桃山、本能寺の調査を行う様指令があったのだ。
基本的に私達は同じ遠征任務をこなすという事もあって、この場所の調査はすっかり日常の一部と化している。
勿論、手は抜かないよ。
何かあって成果主義を掲げる主に泥を塗る様な真似はしたくないからね。

そうして周囲に異常が無いかを確認した後、私は本丸の中へと戻った。

「特に変わった事もなかったよ。
あの時までは。」
審神者の前で口を開く私は、どんな顔をしていたのだろう。

遠征先で獲得してきた札を丁寧に懐に収めながら念の為、主の元へ報告だけしに向かおうと歩みを進めた時の事だった。
いつかの誰かと同じ様に、私は違和感に気付いた。

「…誰か、いるのかな。」

廊下には、厨房から漏れているであろう灯が溢れていた。
もし前に使った者の消し忘れだったらいけないからと、念の為確認しようと思って中を覗き込んだ先で聞こえた声に、ふと目を瞬かせたのを覚えている。

「誰だ？」